米中関税が145%から30%へ急落、日本は円介入・最大予算・物価上昇に直面
米中間の追加関税が145%から30%へと大幅に引き下げられる合意が成立し世界市場が急騰、一方で日本は円安・食料価格上昇・過去最大規模の国家予算という複合的な経済課題に直面している。
1. 米中関税が大幅引き下げ:145%→30%の合意で株式市場が急騰
米中両国は5月14日から追加関税を大幅に引き下げることで合意したと報じられた。米国が中国輸入品に課していた追加関税は145%から30%へ、中国が米国製品に課していた関税は125%から10%へとそれぞれ削減される。この予想外に踏み込んだ関税引き下げにより、ダウ工業株30種・S&P500・ナスダック総合指数が1か月以上ぶりの単日最大上昇幅を記録した。
背景には、2025年から続いてきた関税戦争が世界の消費財・家電・自動車などサプライチェーン全体に深刻なコスト増をもたらし、両国経済にとって持続不可能な状況になってきたという共通認識がある。特に米国では消費財価格の上昇と製造業への投資抑制が政治的なプレッシャーを生んでいた。合意の詳細はまだ交渉中の部分もあるとされているが、市場は「最悪期は過ぎた」との楽観ムードを一気に取り戻している。
S&P500指数は2024年11月の米大統領選挙以来の総合リターンが約30%に達しており(2026年5月6日時点)、インフレ・関税リスクがある中でも企業業績の堅調さと税制優遇措置が相場を下支えしている。ただし、今回の合意が長期的な貿易秩序の安定化につながるかどうかは、今後の実施状況を見極める必要がある。
Tax Foundationtaxfoundation.org
2. 日本、財務省が160円突破後に為替介入を実施、円安圧力が続く
日本の財務省は4月30日、ドル円相場が1ドル=160円という政治的に敏感な水準を突破したことを受け、円買い介入を実施したと報じられた。これは2024年7月以来となる介入で、政府・日銀が円安の急速な進行に対して容認限界を超えたと判断したことを示している。ただし介入後も市場はドル高継続を視野に入れた動きを維持しており、「為替介入は時間を買う措置に過ぎない」とする市場参加者の見方も根強い。
日本銀行は4月27〜28日の金融政策決定会合で政策金利を0.75%に据え置いた。声明ではインフレが目標を大きく上回るリスクを引き続き意識するとして、追加利上げに慎重な姿勢を維持した。原油高(イラン情勢の影響)を主因とするインフレが食料・エネルギー・輸送・輸入品など幅広く生活費を押し上げており、日本の家庭への圧力は増している。
帝国データバンクの調査によると、5月は食品・飲料の値上げ品目数が比較的少ないものの、今夏または秋に向けて再び大規模な値上げが波及する可能性が高いと見込まれている。政府はガソリン補助金でリッターあたり約170円(補助なしで190円)への上昇を抑えているが、財政負担の継続可能性が問われている。
3. 日本の2026年度予算122兆円が成立、高市首相の積極財政が本格化
高市早苗首相の積極財政路線を体現する2026年度予算(総額122兆3,000億円)が参議院を通過し、正式に成立した。これは前年度比7兆1,000億円増の過去最大規模の予算だ。社会保障費が39兆円に上るほか、防衛費・デジタル化・グリーントランスフォーメーションへの投資も拡大している。
この積極財政スタンスに対してはOECDも注目しており、5月13日には「2026年度日本経済審査(Article IV Consultation)」を発表する予定だ。財政拡張と金融政策の方向性、物価上昇へのリスクについて国際機関が詳細な分析を公表することになる。IMFも先に「2026年4月のArticle IV Consultation」を実施しており、日本の財政・金融政策のバランスについて綿密な審査を行っている。
外交面では高市首相がベトナム・オーストラリアを歴訪中であり、複数の閣僚も同時に海外出張中。さらに5月末にロシアへの政府代表団の派遣も確認されており、ロシア市場で事業を継続する日本企業の資産・利益保護が目的と説明されている。経済安保と外交のバランスが問われる局面が続く。
The Japan Timesjapantimes.co.jp
4. 米国株式市場:関税楽観論と高バリュエーションが拮抗
米国株式市場は2026年5月、米中関税引き下げ報道を追い風に強い回復を見せた。S&P500は5月単月で6%超のリターンを記録し、関税ショックで下押しされた2〜3月からの値戻しが完成した格好だ。消費者支出の成長継続・企業業績の予想超え・税制優遇・低金利環境が相場を下支えしている。
ただし、懸念材料も残る。テクノロジーセクターはS&P500の約29%を占める最大セクターだが、米中間のサプライチェーン依存(半導体・組み立て・材料)が最も大きく、関税政策の変動リスクにも最もさらされやすい。アパレル・家電・自動車輸入業者も関税による直接的な利益率圧迫を受けており、業種間のパフォーマンス格差が拡大している。
J.P. MorganやGoldman Sachsは、関税の段階的な引き下げと企業の適応が進むことを前提に、年後半は緩やかな上昇基調が続くと予測している。一方で地政学的リスク(中東情勢・ウクライナ・台湾海峡)や依然として高い株価バリュエーション(PER水準)が潜在的なダウンサイドリスクとして意識されている。
5. OECDが日本経済審査を5月13日に発表、財政健全化への視点が焦点
OECDは5月13日(水)に「2026年度日本経済審査」を正式に公表する予定だと予告している。この審査は先進国経済の定期的な政策診断として位置づけられており、財政・金融・構造改革・労働市場・社会保障など幅広い分野にわたって包括的な評価と提言が行われる。
今回の審査で特に焦点となるのは、高市政権の積極財政スタンスの持続可能性だ。122兆円の過去最大予算・年率1,400%成長のAI産業育成投資・防衛費増強という組み合わせに対し、OECDが財政健全化への工程表をどう評価するかが注目される。また、慢性的な円安・インフレ持続下での日銀の金融政策についても、外部機関としての客観的な分析が示されると期待されている。
日本政府の政策担当者にとっては、G7を含む国際社会からの視線を意識しながら、国内の政治経済的要請と国際的な財政規律のバランスをいかに説明するかが重要な局面となっている。