映像制作

FMX 2026開幕まで2週間、AIとVFXの交差点が熱を帯びる

5月開催のFMX 2026に向けVFX業界のAI活用議論が加速、Nuke 17.0とガウシアンスプラットが制作現場を塗り替える。

1. FMX 2026、テーマ「THE ROAD AHEAD」でAI×VFXを正面から議論

VFX・アニメーション・ゲーム分野の国際カンファレンス「FMX」が30周年を迎える2026年版は、5月5〜7日にシュトゥットガルトで開催される(オンライン・オンデマンドは5月8日以降)。テーマは「THE ROAD AHEAD」で、創造的生産の変革をAIワークフローと新たなコラボレーション形態の両面から掘り下げるプログラムが組まれている。今年は特にAIが実際の制作パイプラインにどう組み込まれるかという「実装フェーズ」の議論が中心となる。

目玉登壇のひとつは、BaobabスタジオCTOのLarry Cutler氏によるセッションで、CGI・モーションキャプチャ・AI生成キャラクターなど過去の「仕事を奪う技術」への業界の反応パターンを分析し、現在のAI普及局面がどの段階に当たるかを歴史的視野で読み解く内容が予告されている。また映像制作スタートアップMoonvalleyのBen Lock氏は、スタジオが生成映像ツールを実制作に投入したときに直面するコントロール・継続性・バージョニング・ガバナンスといった実務上の障壁を具体的に語る予定だ。

Weta FXからはEric Saindon上席VFXスーパーバイザーとSam Cole氏が登壇し、『Avatar: Fire and Ash』の制作報告を行う。大規模なネイティブステレオ写真撮影と完全デジタルの環境CGを融合させた手法、物理ベースの連成エフェクトシミュレーション、そして完全デジタルのパフォーマンスキャプチャキャラクターの実装について詳細が明かされる見込みで、最新の大作VFXがどこまで到達しているかが示される。

Digital Productiondigitalproduction.com

2. Nuke 17.0、ガウシアンスプラットとACES 2.0をネイティブ対応

FoundryはVFXコンポジティングの業界標準ソフトウェアNukeの大型アップデート「Nuke 17.0」を2月26日にリリースした。最大の目玉はUSDベースに全面改訂された3Dコンポジティングシステムと、ガウシアンスプラット(3D Gaussian Splatting)のネイティブサポートである。ガウシアンスプラットは現実空間を高密度な3Dガウシアン分布で表現する技術で、フォトグラメトリに比べてリアルタイムレンダリングとの親和性が高く、バーチャルプロダクションや背景合成の新たな手段として注目を集めている。

カラーマネジメントではACES 2.0規格と、ACEScgおよびOCIO Studio構成をビルトインでサポートするようになり、撮影・合成・グレーディングを通じたカラーパイプラインの標準化が促進される。BlinkScriptのGPUアクセラレーション向上も加わり、カスタムシェーダーの処理速度が大幅に改善した。NukeXではCopyCatシステムを拡張した「BigCat」が利用可能となり、大規模VFXデータセットを使ったカスタムAIモデルのトレーニングが容易になっている。

パイプライン統合面ではVFX Reference Platform CY2025仕様への対応が完了し、スタジオ全体で使用するソフトウェアライブラリのバージョン統一が進められる。バーチャルプロダクション向けには別製品「Nuke Stage」が用意されており、NukeのコンポジットワークフローをそのままLEDウォール環境に接続し、撮影現場でリアルタイムに最終ピクセルを確認できる体制を構築する。

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3. Beeble AI、2D映像を物理ベースのリライタブルアセットに変換

ソウルを拠点とするスタートアップBeeble AIは、2D映像にAI駆動のリライティング処理を施し、物理ベースレンダリング(PBR)アセットとして扱えるようにする技術を2026年のVFX業界に本格普及させつつある。通常のカメラで撮影した人物・物体の映像から、任意の照明環境で自然に見えるよう再照明処理を施した映像素材を生成できるため、照明設備が限られたロケ撮影素材を後処理でスタジオクオリティに引き上げることができる。

従来のリライティングは精密な環境マップ取得や3Dモデルの再構築が前提で、大量の専門作業を必要としていた。Beeble AIのアプローチは入力映像のみから暗黙的に反射率・法線・照明成分を推定し、完全にリライタブルな素材として書き出すことで、後処理パイプラインの工程数を大幅に削減する。映画・ドラマ・コマーシャルの後処理から、ゲームシネマティクスや没入型コンテンツのアセット制作まで幅広い用途が想定されている。

VFX業界ではAIが「繰り返し作業の自動化」にとどまらず、従来は物理的に不可能だった後処理ワークフローを現実化するフェーズに入りつつある。Beeble AIはこの流れを体現するスタートアップのひとつで、業界カンファレンスでの注目度も高まっており、FMX 2026でも関連するセッションへの関心が集まっている。

VFX Voicevfxvoice.com

4. AIとリアルタイム技術の融合でVFXパイプラインが「ハイブリッド化」

2026年のVFX業界を俯瞰すると、AIとリアルタイムレンダリングの両技術が「実験段階」から「主流の生産ツール」へと移行している姿が見えてくる。スタジオはAIを人材の代替としてではなく生産性向上のブースターとして位置付ける傾向が強まっており、アーティストが反復タスクから解放されることで物語・演出・創造的解決策に集中できる環境が広がりつつある。

クラウドベースの協業ツールとリアルタイムレビュー環境の整備も進んでいる。Foundry NukeやSideEffects HoudiniがAWS・GCPとのネイティブ統合を強化し、ショットのレビューサイクルを大幅に短縮する動きが加速している。バーチャルプロダクションでは従来のUnreal Engine中心の体制に加え、NukeベースのLEDウォール制御や、AI生成バックグラウンド映像のリアルタイム合成が選択肢として現実化し、より多くの予算規模のプロジェクトがバーチャルプロダクションを採用できるようになっている。

Hao Li氏(Pinscreen創業者)はFallout Season 2でAIを活用した顔パフォーマンス技術の実作業を完了した実績を持ち、FMX 2026で詳細を講演する予定だ。コンピュータビジョンと顔CGの融合領域は、ゲームエンジンの高精度フェイシャルアニメーションとAI生成の中間に位置する重要ゾーンとして研究・開発が活発化している。

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