政治経済

ホルムズ封鎖・ウォーシュFRB体制下で世界経済が岐路に立つ

イラン戦争によるホルムズ海峡封鎖が長期化し原油高・インフレが世界経済を圧迫するなか、米国では新議長ウォーシュ体制のFRBが初の判断を迫られ、日本では日銀の追加利上げ観測と長期金利の29年ぶり高水準が金融市場を揺るがしている。

Executive Summary

  • イラン戦争によるホルムズ海峡封鎖が続き、ブレント原油は1バレル100ドル付近で高止まり、米国のインフレ率は4月に3.80%へ加速した
  • ケビン・ウォーシュが5月13日に上院で54対45の僅差で承認され、5月15日にFRB議長に正式就任。6月16-17日のFOMCが最初の政策判断の場となる
  • 日銀は4月会合で政策金利を0.75%に据え置いたが、3委員が即時利上げを主張し、6月会合での0.25%引き上げを市場は高い確率で織り込んでいる
  • トランプ・習近平の首脳会談(5月14-16日)で大豆・レアアース・ボーイング機購入など複数分野の合意が成立し、米中関係は「管理された競争」へと移行しつつある
  • 日経平均は5月22日に63,610円(前日比+3.12%)を記録し、ソフトバンクGがOpenAI IPO報道で12%超急騰した

国内政治・経済

日銀、4月会合で政策金利0.75%に据え置き——6月利上げ観測が高まる

日本銀行は4月27・28日の金融政策決定会合で、政策金利を現行の0.75%に据え置くことを決定した。ただし会合では中川順子委員・高田創委員・田村直樹委員の3名が議長案に反対し、政策金利を1%に引き上げる修正案を提出するという異例の展開となった。意見の割れは市場参加者にとって、次回6月16・17日の決定会合での追加利上げが現実的であることを示すシグナルと受け止められた。

金融先物市場では、6月会合での0.25%利上げ実施を7割超の確率で織り込んでいる。さらに年内には政策金利が1.25%まで到達するとの見方も有力で、住宅ローンや企業の資金調達コストへの影響を見極める動きが活発化している。2025年12月に行われた前回の追加利上げを受け、4〜5月には主要金融機関が基準金利と最優遇金利を一斉に引き上げており、変動金利型住宅ローン利用者の返済負担増が家計を圧迫し始めている。

日本の物価動向を踏まえると、2026年春闘での賃上げ率は4月14日時点の連合集計で5.08%と3年連続で5%台を維持している。実質賃金も1月に前年比+0.7%、2月に同+2.0%とプラスに転じており、日銀が目指す「物価と賃金の好循環」がようやく定着しつつある。こうした背景が追加利上げの論拠を強めている一方、イラン情勢に起因する原油高と輸入物価上昇が実質賃金の先行きを不透明にしている。

モゲチェックmogecheck.jp

日本の長期金利が29年ぶり2.73%に上昇——財政・インフレ懸念が債券売り圧力に

5月15日、国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時2.73%に達し、1997年5月以来29年ぶりの高水準を記録した。フラット35など長期固定型住宅ローンの基準金利は2.71%前後と高止まりしており、住宅購入意欲の冷え込みが懸念される。

上昇の主因は二つある。第一に、日銀の金融政策正常化路線のもとで国債買い入れが段階的に縮小され、国債需給が緩んでいること。第二に、イラン戦争を受けた原油高が国内のインフレ圧力を押し上げ、追加的な財政出動への警戒感が財政悪化リスクとして債券市場で意識されていること。また、Moody’sが2025年5月に米国の長期信用格付けをAaaからAa1へ引き下げて以降、先進国財政への懸念が世界的に高まっており、日本国債もその連鎖のなかで売り圧力を受けている面がある。

日本の財政は公債残高がGDP比で200%を超えており、金利上昇は利払い費の膨張に直結する。2026年度予算における国債費(元利払い費)はすでに30兆円超に達しており、金利がさらに1%上昇すれば将来的な利払い費は数兆円単位で膨らむ試算もある。高市政権は財政健全化と経済対策の両立を政策の柱に掲げているが、長期金利の急騰は財政運営の自由度を一段と狭めるリスクとなっている。

日本経済新聞nikkei.com

日本のGDP成長率2026年度は+0.5%に下方修正——イラン情勢・原油高が下押し

複数の民間調査機関の最新見通しによれば、2026年度の実質GDP成長率は+0.5%と、年初の政府見通し(+1.3%)や民間予測の平均値(+0.8%前後)を大幅に下回る水準への修正が進んでいる。最大の下方修正要因はイラン戦争によるホルムズ海峡封鎖の長期化で、原油価格の高止まりが企業収益・家計消費の双方を圧迫している。

国内景気の先行きについては、賃上げによる実質所得の改善と政府経済対策が下支え役を担う構図は変わっていない。しかし輸入物価の上昇が企業のコストを直撃するなか、中小企業の価格転嫁能力には依然として限界がある。特に運送・食品・建設などエネルギー消費の大きいセクターでは、採算悪化が雇用や賃上げの継続に対するリスクとなっている。対外的には米国の関税政策や中国経済の動向も下振れリスクとして挙げられており、リスクが特定の方向に傾いている。

一方、上振れ余地としては、イラン核合意や停戦交渉が成立した場合の原油価格下落が挙げられる。ホルムズ海峡が開放されブレント原油が80ドル台に戻れば、輸入コスト圧力が和らぎ成長率は+0.8〜1.0%程度に回復するとの試算もある。企業の設備投資も半導体・AI関連を中心に堅調を保っており、外部環境が改善すれば内需は底堅い動きを示す可能性がある。

第一ライフ資産運用経済研究所dlri.co.jp

日米貿易:通商法122条に基づく10%均一関税、7月24日に期限——次の手を模索するトランプ政権

2026年2月、米連邦最高裁が相互関税を定めた大統領令を「違法・無効」と判断し、トランプ政権はその直後から通商法第122条を根拠に全世界からの輸入品に対して10%の追加関税を賦課している。この措置は発動から150日間の時限措置とされており、7月24日が期限となる。現時点では日本産品も対象に含まれており、輸出企業の収益を圧迫している。

日米間ではすでに包括的な協議が進んでおり、日本政府系金融機構による最大5500億ドル規模の対米投資(出資・融資・融資保証)と引き換えに、半導体・医薬品・鉄鋼・造船・重要鉱物・エネルギー・自動車・AI分野での協力強化について合意している。この投資コミットメントが122条関税の免除または軽減交渉において日本の交渉カードとなっている。ジェトロの分析によれば、関税停戦が成立した2025年以降、米国への日本からの製品輸出は数量ベースでほぼ横ばいを維持しているが、輸出金額ベースでは円安効果が下支えとなっている。

7月24日以降についてはトランプ政権が301条に基づく調査を並行して実施しており、122条が失効した後に遅滞なく301条関税を導入する可能性が指摘されている。さらに301条関税は相互関税に近い高い税率での賦課が可能であることから、日本の輸出企業や産業界は引き続き情勢を注視している。日米両政府は貿易摩擦の早期解消を目指す姿勢を表明しているが、具体的な税率や適用範囲をめぐる交渉は継続中である。

ジェトロjetro.go.jp

参院選を7月に控え、与野党が政策論争を本格化——国家情報会議創設法案が参院審議入り

2026年参議院議員通常選挙は7月3日公示・7月20日投開票が予定されており、各党が争点の形成に注力している段階に入った。物価高・賃上げの恩恵格差・エネルギー政策・憲法改正・防衛増税の財源などが主な争点として浮上している。フィリピンのマルコス大統領が5月中に訪日し、高市首相と会談するなど、安全保障分野での外交も選挙前の政権運営に影響を与えている。

国内政治の動きとしては、国家情報会議創設法案が5月8日から参議院での審議に入った。日本版NSC(国家安全保障会議)の機能を補完するため、内閣直属の情報分析機関を設立する内容で、与党は今国会での成立を目指している。一方、野党は情報収集範囲の際限ない拡大や人権侵害のリスクを指摘し、慎重審議を求めている。

世論調査では参院選に向けて立憲民主党が議席増の勢いを見せているほか、国民民主党も比例での議席倍増が見込まれる。自民・公明の連立与党が昨年の衆院選に続き参院でも過半数を維持できるかが最大の焦点となっている。選挙結果によっては高市政権の政策運営の自由度が大きく変わるため、経済界・金融市場も選挙情勢を注視している。

KSI政策ニュースpolicynews.jp


国際政治・地政学

イラン戦争・ホルムズ海峡封鎖が長期化——原油100ドル超、米イラン交渉は合意直前か

2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへの空爆を開始し、最高指導者ハメネイ師の暗殺によって事実上の戦争状態に突入した。イラン革命防衛隊(IRGC)はホルムズ海峡を通商船舶に対して閉鎖し、商船への攻撃・機雷敷設によって海上輸送を遮断。世界の石油供給量の約20%に当たる1日2000万バレル相当の輸送が停滞し、エネルギー価格は急騰した。

5月7日時点でブレント原油先物は1バレル100.06ドル前後で推移しており、米国内のエネルギーコストは前年比+17.9%、ガソリンは+28.4%、灯油・暖房油は+54.3%という異例の上昇幅を記録している。これが米国のインフレ加速(4月CPI+3.80%)の最大の要因となっている。ゴールドマン・サックスなどウォール街のアナリストの一部は、交渉が決裂した場合に原油が1バレル200ドルに達するリスクシナリオを試算し始めている。

一方、外交面では米国とイランが停戦・核濃縮モラトリアム・制裁解除・凍結資産返還を柱とする14項目の合意メモランダム締結に向けた交渉を進めており、合意直前との報道もある。合意が成立しホルムズが開放されれば世界のエネルギー市場・インフレ・各国中銀の政策判断に大きな転換をもたらす。日本は原油輸入の相当割合を中東に依存しており、交渉の行方は円相場・企業収益・物価に直結する最重要外部要因の一つとなっている。

Wikipediaen.wikipedia.org CNBCcnbc.com

ウクライナ・ロシア停戦交渉は膠着——勝利記念日の一時停戦も双方が相手の違反を主張

5月8〜9日のロシア「戦勝記念日」に合わせてロシアが一時停戦を宣言し、ウクライナも独自の停戦開始を宣言したが、双方はすでに相手側による停戦違反を複数回報告しており、実質的な戦闘継続が続いた。4月29日のプーチン・トランプ電話会談でロシア側が停戦への意欲を示したものの、ロシアはドネツク州の残余地域の割譲を停戦条件として求めており、ウクライナはそれを拒否している。

和平交渉は2カ月以上にわたって実質的に停滞しており、米国の外交上の焦点がイラン戦争の収拾に移っていることもウクライナへの関与を相対的に薄めている要因とされる。プーチン大統領は最近「問題は解決に向かっている」と述べ、欧州安全保障の新たな枠組みへの参加意欲を示唆したが、具体的な停戦ラインについて交渉の進展はない。ウクライナ軍はモスクワの高級住宅街や製油所を含むロシア国内への長距離攻撃能力を維持しており、この抑止力がプーチンに一時停戦を受け入れさせる要因となっているとの分析もある。

欧州側ではフランスとイギリスが「軍事ハブ」をウクライナ国内に設置する安全保障保証の提供を提案しており、米国も安全保障保証の議論に加わりつつある。一方でロシアの欧州向けガス輸出シェアはすでに8%を下回るまで低下しており、エネルギーを通じた欧州への影響力はほぼ喪失した。停戦が成立しない限り、戦時経済コストと防衛産業への需要が欧州の財政・物価に重しとなる状況が続く見通しである。

Al Jazeeraaljazeera.com

トランプ・習近平首脳会談(5月14〜16日)——大豆・レアアース・ボーイング機で複数合意

トランプ大統領は5月14〜16日に訪中し、習近平国家主席と首脳会談を行った。会談にはイーロン・マスク、ティム・クック、ジェンセン・フアンをはじめとする米国大手企業のトップが同行し、投資・通商分野での具体的な成果が複数発表された。ホワイトハウスの公表によれば、中国は2026〜28年の各年に少なくとも170億ドル相当の米国農産品を購入すること、および2025年10月に約束した2500万メートルトン/年の大豆輸入の履行を確認した。

レアアース分野では、中国が米国の懸念に対処するために希土類の生産・処理設備と技術の輸出制限に関する規制を撤廃し、イットリウム・スカンジウム・ネオジム・インジウムなど重要鉱物のサプライチェーン不足を解消するよう努力することを表明した。航空機では中国の航空会社が米国製ボーイング航空機200機の購入を初期承認し、中国産牛肉の輸入再開に合わせ400超の米国産牛肉施設への市場アクセス回復も合意された。習近平主席は台湾問題の誤った扱いが米中関係を「深刻な危機」に陥れると警告しつつも、経済実務での協力を前進させた。

米中の二国間貿易額は2025年に約4150億ドルまで落ち込んでおり、2022年のピーク約6900億ドルから大幅に縮小していた。今回の合意は関係の「一方的な衝撃から管理された競争へ」の移行と位置付けられており、少なくとも300億ドル規模の相互関税引き下げの枠組み交渉も並行して進んでいる。関税停戦を定めたクアラルンプール合意は2026年11月10日まで有効であり、その期限内に構造的な通商関係の再構築を模索する動きが続く見通しである。

CNBCcnbc.com White Housewhitehouse.gov

UAEがOPEC・OPEC+から脱退——カルテルの生産調整能力が一段と低下

アラブ首長国連邦(UAE)は4月28日、OPECおよびOPEC+からの脱退を正式発表し、5月1日付けで発効した。UAEはOPEC内で第3位の産油国であり、1日あたりの生産能力は約480万バレルに達する。さらに2027年までに日量500万バレルへの生産能力拡大を目指した数十億ドル規模の投資を継続しており、脱退後は生産割当の制約なしに増産路線を加速できる環境が整った。

脱退の主な理由として、OPECの生産割当がUAEの増産投資と整合しないこと、近年のサウジアラビアとの政治的・外交的離反、そして米国主導の「大西洋・レバント枠組み」とより密接に連携する姿勢への転換が挙げられている。UAEはOPEC全体の生産能力の約14%を担っており、脱退によってサウジアラビアを中心とする残存メンバーの結束と市場統制力は一段と弱まった格好だ。

市場への直接的な影響は短期的には限定的との見方が多いが、OPECの求心力低下という構造的変化は中長期的な原油価格の管理を難しくする。ホルムズ危機で供給が既に逼迫するなか、UAEが独自に増産に動けば国際石油市場における価格形成の不確実性がさらに高まる。日本・欧州・アジア各国にとってはエネルギーの調達多様化の観点からUAEとの二国間エネルギー協力が改めて重要性を増す局面でもある。

Al Jazeeraaljazeera.com

中国の輸出がQ1 2026に前年比+14%——対米は-16%と大幅減だが世界全体では堅調

中国税関総署の発表によれば、2026年第1四半期(1〜3月)の総輸出額は9776億ドルと前年同期比+14%の高い伸びとなった。ただし対米輸出は同-16%と大幅に減少しており、米中間の高関税が対米貿易を直撃している実態が明確になった。代わりにASEAN・中東・アフリカ・南米などへの輸出が急増しており、貿易相手の多角化戦略が数字に表れ始めている。

中国は2026年の関税スケジュールを改定し、高度技術・グリーン転換・ヘルスケアに関わる分野を重点分野として指定。重要コンポーネントや先端素材の輸入関税を引き下げ、国内製造の競争力底上げを図る政策パッケージを稼働させている。国内消費は依然として不動産セクターの不振を引きずっており、輸出の堅調さが景気下支えとなっている構図が続いている。

米中関係の「安定化」が進んでも、対米輸出の回復には相当の時間を要するとみられる。米中はクアラルンプール合意で設定した関税停戦の枠内で少なくとも300億ドル相当の相互関税削減の枠組みを交渉中だが、構造的な競争関係や技術輸出規制は維持されており、貿易の「完全正常化」には至っていない。

South China Morning Postscmp.com


マーケット・金融

ケビン・ウォーシュがFRB議長に就任——タカ派色強く、6月FOMCが最初の試練

米上院は5月13日、ケビン・ウォーシュ氏のFRB議長指名を54対45の賛成多数で承認した。この票差は近代のFRB議長承認投票で最も僅差であり、民主党からはフェタマン上院議員(ペンシルベニア州)1名のみが賛成票を投じる、ほぼ党議拘束に沿った結果となった。ウォーシュ氏は5月15日、ホワイトハウスの東の間でクラレンス・トーマス最高裁判事から宣誓を受け正式に就任した。1987年のグリーンスパン議長以来、ホワイトハウスで宣誓式が行われたのは初めてである。

ウォーシュ氏はFRB理事時代のFOMC投票でタカ派寄りの立場をとってきた人物であり、市場は「高インフレ下でのタカ派FRB議長」という組み合わせを利上げ確率の上昇として解釈している。米国のインフレ率は4月に3.80%(3月3.30%から上昇)まで加速しており、5月の先行指標では3.89%への上昇が見込まれている。エネルギーコストが前年比+17.9%と最大の押し上げ要因だが、食品・住居費も高止まりしている。

ウォーシュ議長の最初のFOMCは6月16〜17日の開催となる。市場はイラン情勢の推移を最大の変数としながら、FRBが少なくとも年末(12月)まで政策金利(4.25〜4.50%)を据え置くと見ている。一方、ウォーシュ氏のタカ派的な姿勢が景気を過度に冷やすリスクへの警戒も根強く、金融政策の不確実性は当面高止まりしそうだ。

CNBCcnbc.com Yahoo Financefinance.yahoo.com

米国インフレが4月3.80%に加速——エネルギー高が主因、FRBの年内利下げは遠のく

米労働統計局が公表した2026年4月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比+3.80%と、3月の+3.30%から大幅に上昇した。クリーブランド連銀の即時予測(ナウキャスト)では5月も+3.89%への続伸が見込まれており、インフレの高止まりが鮮明となっている。ホルムズ海峡封鎖を背景としたエネルギー価格の急騰が主因であり、食品・サービス価格も根強い上昇圧力を受けている。

S&Pグローバルは「カーブ・ユア・エンスージアズム(過度な楽観を戒めよ)」と題したQ2 2026米国経済見通しを発表し、関税とイラン戦争という2つの価格ショックが重なるなか、消費・投資の先行きに慎重姿勢を示した。PIIEも「2026年における米国インフレ上昇リスク」と題した分析で、イラン情勢が長期化した場合の物価へのさらなる悪影響を警告している。議会予算局(CBO)は2026〜2036年の予算・経済見通しを公表し、財政赤字の継続拡大を示唆している。

FRBが少なくとも12月まで利下げを見送るとの見方が市場のコンセンサスとなっており、住宅ローン・自動車ローン・企業融資コストの高止まりが続いている。2025年5月のMoody’sによる米国格付け引き下げ(Aaa→Aa1)の余韻もあり、長期国債の利回りが下がりにくい環境が続く。インフレが収束し始めるかどうかは、ひとえにホルムズ海峡を巡る米イラン外交の進展にかかっている。

Yahoo Financefinance.yahoo.com

日経平均が63,610円に上昇——ソフトバンクG、OpenAI IPO報道で12%超急騰

5月22日(金)の東京株式市場で日経平均株価は前日比+3.12%の63,610円で引け、TOPIXも+1%の3,892ポイントとなった。この1カ月では+7.56%、前年同期比では+71.18%という驚異的な上昇ペースとなっている。最大の牽引役となったのはソフトバンクグループ(SBG)で、前日の+20%に続く+12%近い急騰を記録し、2日間合計で時価総額が約610億ドル(約9.6兆円)増加した。

SBG急騰の直接的契機は、同社の出資先であるOpenAIとSBエナジーが米国株式市場でのIPOに向けた動きを加速しているとの報道である。OpenAIはゴールドマン・サックスおよびモルガン・スタンレーと協力し、早ければ数週間以内に機密IPO申請を行い、2026年秋の公開を目指しているという。SBGは2025年度末(2026年3月31日)時点でOpenAIに324億ドルを投資済みであり、さらに4月に100億ドルの追加出資を実行、10月までの累計投資額は646億ドル(持分比率約13%)に達する見込みである。

この銘柄へのAI関連マネーの流入は日本市場全体の押し上げにも貢献した。富士通・Kioxia・Ibiden・Fujikuraなど半導体・電子部品株も軒並み上昇し、機関投資家のAI関連エクスポージャー拡充の動きが続いている。米国の金利高止まりや円相場の動向は引き続き日本株のリスク要因だが、AI産業の成長期待が当面の上昇基調を支える柱となっている。

CNBCcnbc.com Bloombergbloomberg.com

ドル円158〜159円台で推移——日銀利上げ観測と円安材料が綱引き

5月22日終値ベースで、ドル円相場は158円台後半で推移している。今週(18〜22日)の値幅は35銭と2019年12月下旬以来の狭さに収まっており、方向感に乏しい膠着状態が続いた。安値は1ドル=159円14銭、高値は158円79銭という非常に狭い値幅だった。

円安方向に作用しているのは、日米金利差の依然として大きな開き(米国4.25〜4.50%対日本0.75%)、中東情勢不安定化による原油輸入コスト増(日本の貿易収支悪化要因)、および対外直接・証券投資の拡大(日本からの資本流出)である。一方で、日銀の6月利上げ観測や、ホルムズ危機が収束した場合の原油安・日本の貿易収支改善期待が円高方向への圧力として作用している。

2026年前半を振り返ると、円相場は1ドル=155〜162円のレンジで推移してきた。日銀が6月に0.25%の追加利上げを実施した場合、日米金利差が縮小に向かい円の下支え効果が期待されるが、米国インフレの高止まりが長引けばFRBも長期にわたって高金利を維持するため、その効果は限定的との見方もある。輸入物価の高騰が国内インフレを増幅する悪循環を防ぐためにも、円安是正が政府・日銀双方の政策上の関心事となっている。

オリコンoricon.co.jp

Moody’sが米国格付けをAaa→Aa1に引き下げ——長期国債の利払い増が財政を圧迫

2025年5月16日、Moody’sは米国の長期信用格付けをAaaからAa1に引き下げた。これにより米国は主要格付け3社(S&P・フィッチ・Moody’s)すべてで最上位格付けを失った格好となった。Moody’sがAaa格付けを付与し続けたのは1917年以来100年以上であり、その引き下げは米国財政への構造的な懸念を象徴する出来事として市場に受け止められた。

引き下げの主因は連邦支出の増大と減税による歳入減少に起因する財政赤字の恒常化、および高金利環境下での利払い費の急増である。Moody’sは米国の連邦債務残高がGDP比で2035年までに134%に達するとの試算を示しており、2024年時点の98%から大幅に悪化する見通しだ。格下げ以降、長期国債への利回り上昇圧力が続いており、住宅ローン金利や企業融資コストの高止まりを通じて実体経済への影響が広がっている。

格付け引き下げは株式・不動産・信用市場などのリスク資産にも波紋を広げており、米国への外国資本の流入が従来に比べてより選別的になりつつある。日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)やアジアの中央銀行など米国債の大口保有主体の投資動向が注目されている。短期的な売り圧力は一服しているが、中長期的には米国の財政規律への信頼回復が課題として残っている。

CSIScsis.org


企業・産業

ソフトバンクG、OpenAI IPOへ向け646億ドルの投資総額が確定——日本最高益も記録

ソフトバンクグループは2025年度(2026年3月期)通期決算でAI関連投資の評価益を中心に純利益が約314億ドルに達し、日本企業の年間純利益として過去最高を更新した。同社CFO後藤芳光氏は決算説明会で、2025年度にOpenAIへ324億ドルを投資したことを確認し、4月の100億ドル追加出資で2026年10月までの累計が646億ドル(持分比率約13%)に達すると述べた。

OpenAIはゴールドマン・サックス・モルガン・スタンレーを主幹事に選定し、数週間以内に機密IPO申請を行う見通し。市場関係者は「AI産業史上最大規模のIPO」と位置付けており、上場時の評価額は数千億ドルに達するとの観測もある。SBGのOpenAI持分は上場後に流動化が進めば数十兆円規模の投資リターンとなる可能性があり、これがSBG株の急騰を正当化する根拠として挙げられている。

一方、同社の財務構造においてはAI投資に対する400億ドル規模のローン調達(OpenAI株を担保とした資金調達)が行われており、OpenAI株の評価が急落した場合の連鎖リスクも無視できない。バブル懸念を指摘するアナリストも存在するが、当面は市場のセンチメントが強気に傾いており、日本のAI関連株全体を牽引する存在となっている。

Bloombergbloomberg.com

Nvidia H200の対中輸出が承認——10社に各7.5万枚上限、実際の出荷は法的課題で保留

米国商務省は2026年1月、中国の主要テクノロジー企業に対してNvidiaのH200 AIプロセッサを事例ごとのライセンス方式で販売することを正式に承認した。対象企業はアリババ・テンセント・バイトダンス・JD.comなど約10社で、各社に認められる購入上限は7.5万枚、米国内販売量の50%を超えない水準とされている。また購入企業はセキュリティ手続きの整備と軍事・監視目的での不使用を保証する義務を負う。

この政策決定の背景には、5月14〜16日のトランプ・習近平首脳会談がある。半導体輸出の一部開放は、大豆・レアアース・ボーイング機と並ぶ対中関係修復の手土産として位置付けられている。Nvidiaは制裁強化の連鎖によってH100の中国販売が事実上不可能となっていたため、業績へのプラス効果が見込まれる一方、H200でさえも中国にとってはDeepSeekなどの国産モデル開発に直接活用できる能力を持つとして、安全保障上のリスクを指摘する声も根強い。

ただし5月時点で実際の出荷は行われていない。米中の技術覇権争いと中国の新たなサプライチェーン規制により、法的環境が整うまで取引は事実上凍結状態にある。市場はNvidiaの中国向け売上回復への期待を株価に部分的に織り込んでいるが、規制の全貌が固まるまで不確実性は残る。

The Defense Newsthedefensenews.com

日本の春闘賃上げ5.08%で3年連続5%台——実質賃金プラス転換で「好循環」定着へ

連合が4月14日時点でまとめた2026年春季労使交渉(春闘)の回答集計によれば、賃上げ率は5.08%と3年連続で5%台を維持した。組合員数300人未満の中小組合でも4.84%と高水準の回答が続いており、大企業主導から中小企業にも賃上げが波及しつつある構図が見て取れる。経団連が取りまとめた大手企業の平均月例賃金引き上げ額は約1.8万円で、定期昇給相当分を除いたベースアップ額は1.2万円前後との報告もある。

実質賃金(帰属家賃を除く総合ベース)は2026年1月に前年比+0.7%、2月に+2.0%とプラスへ転換しており、物価上昇率を賃金上昇率が上回る状態が継続している。2026年度通年では実質賃金が+1%程度のプラスになるとの見通しが複数の研究機関から示されており、日銀が中長期的目標として掲げる「物価と賃金の好循環」の定着に向けた最初の本格的な確認点となっている。

ただし5月の時点でも飲食料品は70品目が値上げされ、光熱費・輸送費・包装資材のコストは依然として企業の収益を圧迫している。イラン戦争による原油高が輸入コスト上昇を通じて物価を押し上げており、消費者の体感では「物価が賃金を下回っている」という印象を持つ人も多い。政府はこうした認識ギャップを埋めるためにも物価対策(エネルギー補助金・食料品補助)の継続を迫られており、財政と物価安定の綱引きが続いている。

経団連タイムスkeidanren.or.jp

中東・レバノン:イスラエルがベイルート空爆を再開——停戦合意後初の市街地攻撃

ヒズボラとイスラエルの間で成立していた停戦合意の後、イスラエル軍はレバノン各地への空爆を再開した。ベイルート市街地への空爆は停戦以来初となり、民間インフラへの被害も報告されている。ヒズボラ側もイスラエル北部への攻撃を継続しており、実質的に停戦が機能していない状態が続いている。

この状況はイラン戦争と密接に連動している。イランが直接的にヒズボラへの武器供給と指揮を支援してきた経緯から、米・イスラエルによるイランへの軍事攻撃がレバノン戦線の激化に波及した格好だ。中東の不安定化は石油タンカーの航路をさらに脅かし、エネルギー価格の高止まりを構造的なものにするリスクを高めている。

国連安保理は緊急会合を開催したが、米国が拒否権を行使する可能性がある中で停戦決議の採択は困難な状況にある。欧米各国は外交的解決を呼びかけているが、ロードマップが見えない状況が続いており、人道危機の深刻化と国際社会の分断を招いている。日本はODA・人道支援の観点からも中東情勢を注視しており、現地在留邦人の安全確保に向けた動きも続けている。

Geopolitical Monitorgeopoliticalmonitor.com