政治経済

ホルムズ危機が揺さぶる物価・円・市場——党首討論で消費税ゼロ法案を明言

中東イラン危機に起因する原油高・円安が日本の物価と金融市場を直撃するなか、高市首相は国会初の党首討論で食料品消費税ゼロの法案提出を夏前に行うと明言し、米国では新Fed議長ウォーシュが就任して利下げ期待がさらに後退した。

Executive Summary

  • 高市早苗首相は5月20日の党首討論で食料品消費税ゼロ法案を夏前に国会提出すると明言した
  • イランが米停戦案に回答を提出したが、トランプ大統領が「全く受け入れられない」と拒否し、ホルムズ海峡の実質封鎖は継続、ブレント原油は100ドル台前半で高止まりしている
  • ケビン・ウォーシュ新Fed議長が5月18日に就任宣誓し、6月16-17日のFOMCが初の主宰会合となる見通しで、米CPIの前年比3.8%上昇を受けて年内利下げ観測は消滅した
  • 日銀は4月に政策金利を0.75%に据え置き、イラン情勢の影響を見極める姿勢を維持しているが、情勢安定の兆候があれば6月の追加利上げが視野に入る
  • 政府・日銀はGW期間中に計約10兆円規模の円買い為替介入を実施したが、ドル円は159円前後に再び押し戻されている

国内政治・経済

党首討論——高市首相、食料品消費税ゼロ法案を「夏前に提出」と明言

5月20日午後3時から衆院で、2月衆院選後初となる党首討論が開催され、高市早苗首相と過去最多の野党6党首が一対一の論戦を展開した。最大の焦点となったのは物価高対策で、高市首相は社会保障国民会議の中間取りまとめが出次第、食料品の消費税をゼロにする法案を夏前に提出すると明言し、「スピード感も重要だ」と早期実現に強い意欲を示した。これは2月衆院選での自民党公約を具体的に前進させる発言として市場・政界の注目を集めた。

野党側からは国民民主党の玉木雄一郎代表が、中東情勢を受けた財政支出の必要性を踏まえて消費税減税の実施時期の柔軟な対応を求めた。高市首相は補正予算の財源について「大きな形で赤字国債を発行しなくても大丈夫」と主張し、財政規律への配慮を示しながらも積極的な支援策継続の意向を示した。石油製品の供給不足を含む物価高全般が論点となり、各野党が中東情勢の悪化に伴う家計負担増への対策を求めた。消費税ゼロ法案の財源をめぐっては、社会保障の安定財源確保と食料品軽減措置の設計をどう両立するかが法案提出までの課題として残っており、年間数兆円規模の財政インパクトが見込まれている。

東京新聞tokyo-np.co.jp 日本経済新聞nikkei.com

高市政権の給付付き税額控除——社会保障国民会議で制度設計が本格化

高市早苗首相が積極財政の柱の一つに位置づける「給付付き税額控除」について、2026年1月に設置された社会保障国民会議での議論が進んでいる。この制度は、所得税の控除額が納税額を上回る低所得層に対して差額を現金で給付する仕組みで、いわゆる「年収の壁」問題への対応としても位置づけられている。2026年6月に中間整理が公表される予定で、年末に具体案が策定されれば本格導入は2027年以降となる見通しだ。

制度設計の焦点は受給対象者の所得ラインの設定と給付額の水準で、立憲民主党が提案する年4万円案をはじめ複数の案が検討されている。高市政権の積極財政路線のもとで制度化が進めば、低所得層の消費底上げと所得再分配機能を同時に果たす可能性があるが、既存の社会保障制度との整合性と財源の具体化が引き続き議論されることになる。

税労taxlabor.com 日本経済新聞nikkei.com

予備自衛官制度——公務員の活動促進を定める法案が衆院を通過

公務員が予備自衛官として活動しやすくするため、職場の許可要件の緩和や給与に関する特例を定める法案が5月19日に衆院を通過した。2026年度防衛費が初めて9兆円を突破し、GDPの2%水準に近づくなかで、防衛力整備の主軸である人的基盤の充実を制度面から後押しする措置として位置づけられる。2023年から2027年度までの5年間で43兆円を投じる防衛力整備計画の中間段階に当たる2026年において、予備自衛官の確保は優先課題の一つとなっている。スタンド・オフ防衛能力の強化として12式地対艦誘導弾能力向上型の取得に1770億円が計上されるなど、防衛態勢の多層的な整備が同時並行で進んでいる。

防衛省mod.go.jp

日韓首脳会談——エネルギー安全保障での協力枠組みを新設

高市早苗首相と韓国の李在明大統領は5月19日、奈良で約100分にわたる首脳会談を行い、日韓関係の良好な基調を維持・強化していくことで一致した。ホルムズ海峡危機を直接の背景として、原油・石油製品およびLNGの相互融通・スワップ取引を含む日韓エネルギー安全保障強化協力を立ち上げることで合意したことが最大の成果となった。中東情勢を踏まえたインド太平洋地域のエネルギー備蓄強化も協力の柱に位置づけられた。

日本と韓国はともに中東からの原油依存度が高く、ホルムズ海峡経由の輸送が事実上制限されている現状において、備蓄の相互活用や代替ルートの確保は両国にとって緊急性の高い課題となっている。北朝鮮の核・ミサイル問題については日韓、日韓米での緊密な連携を改めて確認し、安全保障分野での協力深化も確認された。

外務省mofa.go.jp ジェトロjetro.go.jp

高市首相の外交新方針——「力の時代」に法の支配を同志国連携で維持

2026年5月2日に高市首相が発表した新外交方針は、米中による「力の時代」に対応した「法の支配」の維持を中心的な理念として掲げている。経済安全保障を軸に、インド太平洋地域の同志国との実務的な協力枠組みの構築に重点が置かれており、エネルギー・重要鉱物・半導体サプライチェーンの強靱化が具体的な施策として示されている。内閣支持率は6〜7割と高水準を保っており、特に20〜40代の若年層の支持が厚く、積極財政と安全保障強化を組み合わせた路線への期待が高いことを示している。

日本経済新聞nikkei.com

日本の物価動向——ガソリン補助金で169円台を維持も原油高で先行き警戒

政府のガソリン補助金は5月時点で補助単価42.6円/Lとなっており、全国平均店頭価格は169.4円前後に抑えられている。2025年12月末にガソリンの暫定税率が廃止され、2026年4月には軽油の暫定税率も廃止されたことで税制面での価格抑制効果は一定程度働いているが、ホルムズ海峡の運航制限が続くなかで原油輸入コストの上昇圧力は根強い。4人家族の家計負担増加は2025年比で約8.9万円増との試算もあり、物価高対策の拡充は国民生活の喫緊の課題となっている。全国CPIも高止まりが続いており、賃金上昇が物価上昇に追いつかない実質賃金の減少が政治課題として焦点化している。

補助金ポータルhojyokin-portal.jp 第一ライフ資産運用経済研究所dlri.co.jp


国際政治・地政学

イラン停戦交渉——トランプが回答を「全く受け入れられない」と拒否、封鎖継続

イランは5月上旬、米国が提示した停戦案への回答として、軍事行動の終結後に段階的にホルムズ海峡を商業船舶に開放すること、および停戦後30日間の協議期間中に高濃縮ウランの一部を希釈・第三国移送することを提案した。しかしトランプ米大統領は5月10日にこの回答を「全く受け入れられない」として強く拒否し、イスラエルのネタニヤフ首相も「イランの核開発能力を完全に排除しなければ戦闘は終わらない」との立場を堅持している。

米軍が2025年6月に実施したイランの核関連施設への空爆を契機に始まったホルムズ海峡の事実上の封鎖は、世界の原油需要の約20%を占める日量約2000万バレルの流通を制限した。原油ブレントは封鎖前の60ドル台から4月7日に112.95ドルまで急騰し、5月現在は100ドル台前半で高止まりしている。複数の市場アナリストは第3四半期中に120ドルへの上昇を予測している。日本の原油輸入の中東依存度は約94%、うちホルムズ経由が約93%に達しており、3月には日本籍コンテナ船の被弾も報告されるなど、サプライチェーンリスクへの対応が喫緊の課題となっている。

ジェトロjetro.go.jp グローバルSCM研究所global-scm.com

ウクライナ——3日間停戦は事実上破綻、和平交渉は長期化

トランプ米大統領の仲介により、ロシアとウクライナは5月9日から11日までの3日間の停戦と相互1000人ずつの捕虜交換に合意したと発表された。しかし停戦期間中、双方が互いに停戦を守っていないと発表し、実質的に破綻した形となった。トランプ政権が提示した28項目の停戦案は20項目に整理されているが、領土問題や安全保障の枠組みをめぐる溝は依然深く、ウクライナや欧州諸国からの反発も根強い。本格的な和平交渉への移行には至っておらず、戦況の膠着と外交交渉の難航が続いている。

時事ドットコムjiji.com 日本国際問題研究所jiia.or.jp

米中関係——最高裁の関税違憲判断後も新措置の導入観測が続く

米連邦最高裁判所がIEEPAに基づくトランプ政権の相互関税措置を違憲と判断したことを受け、米国は通商法122条を根拠に全輸入品に一律10%の関税を課している。2025年10月の米中首脳会談で両国は相互関税の上乗せ分を1年停止することで合意しており、直接的な貿易衝突は短期的に回避されている。しかし通商法301条に基づく調査が進行中であり、122条が失効した後に新たな関税措置が導入される可能性が指摘されている。米国の実効関税率は2024年の2.4%から2025年末には13.6%に上昇しており、コスト転嫁が本格化する2026年のインフレへの影響が注目されている。2026年11月中間選挙を前に民主党は関税による生活コスト上昇を政権批判の材料にしており、通商政策の見直し議論が活発化している。

ジェトロjetro.go.jp 第一ライフ資産運用経済研究所dlri.co.jp


マーケット・金融

日経平均——5月20日に786円安で6万円割れ、金利高とエネルギーコストが重荷

5月20日の東京株式市場で日経平均株価は786円安の5万9000円台に下落し、一時6万円の節目を割り込んだ。金利上昇とエネルギーコストの高止まりがAI・不動産関連株を中心に重荷となっており、日経平均先物は翌日も6万570円水準での推移が続いている。野村証券ストラテジストが2026年末の日経平均を6万円に上方修正していたが、中東情勢の長期化とインフレ環境の変化により見通しは下方修正方向の圧力を受けている。TOPIXも連動して軟調に推移しており、NT倍率の高水準が示す一部大型株への集中が是正される局面に差し掛かっているとの指摘がある。

SBI証券sbisec.co.jp 日経CNBCnikkei-cnbc.co.jp

為替——政府・日銀の10兆円規模の円買い介入後も159円台に戻り

ドル円相場は5月20日時点で1ドル159円前後で推移している。政府・日銀は4月30日から5月初旬にかけての大型連休期間中に、1ドル160円の防衛ラインを守るため計4回の円買い・ドル売り介入を実施し、総規模は推定10兆円前後に達した。介入直後には155円台まで円高が進んだが、日米金利差の縮小が見通せないなかで効果は限定的となり、再び159円台に押し戻されている。

片山さつき財務大臣とベッセント米財務長官は5月12日の会談後に「為替市場における望ましくない過度な変動に対処する意思疎通と連携は揺るぎない」との共同メッセージを発信しており、市場への牽制姿勢は維持されている。しかしホルムズ海峡封鎖に伴う原油高が継続するかぎり、円安圧力の根本的な解消は難しく、当局は「時間を買う」介入で本格的な金融政策正常化を待つ構図が続いている。

野村総合研究所nri.com 日本経済新聞nikkei.com

日銀——0.75%に据え置き継続、6月利上げはイラン情勢次第

日本銀行は4月27-28日の金融政策決定会合で短期政策金利を0.75%に据え置き、1995年9月以来の高水準を維持した。イラン戦争関連の原油価格高騰を受けてインフレ予測は引き上げられたが、経済への実質的な打撃を見極める必要があるとして利上げは見送られた。2025年12月の前回利上げを受けて住宅ローンの変動金利は2026年7月以降の返済に0.25〜0.35%上乗せの影響が反映される見通しで、家計への影響は顕在化しつつある。

市場参加者の間では、中東情勢が大きな混乱なく推移するならば6月の追加利上げは十分あり得るシナリオとの見方が広がっている。日銀の着地目標金利は2.0%と見られており、今後の利上げペースは原油価格と円安動向、そして米Fed新執行部の政策スタンスに大きく左右されることになる。

日本銀行boj.or.jp 三井住友DSアセットマネジメントsmd-am.co.jp

米Fed——ウォーシュ新議長が就任、インフレ加速で年内利下げ観測消滅

ケビン・ウォーシュ氏が5月13日に54対45の僅差で上院承認を受け、5月18日に米連邦準備制度理事会議長に就任宣誓した。ジェローム・パウエル前議長の任期満了(5月15日)に伴う交代で、ウォーシュ新議長の初のFOMC主宰は6月16-17日の会合となる。インフレ抑制に積極的な投票記録を持つウォーシュ議長就任のもと、市場では2026年内の追加利下げ観測がほぼ消え、CMEフェドウォッチによれば2026年12月のFOMCで政策金利を3.50-3.75%に据え置く確率が85%となっている。

4月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.8%上昇と約3年ぶりの高水準を記録した。クリーブランド連銀のインフレナウキャストは5月のCPIが3.89%程度に達する可能性を示唆している。原因はイラン戦争による原油高とトランプ関税のコスト転嫁の複合で、ガソリンスタンドの売上高は前月比15.5%増と1992年の統計開始以来最高の伸び率となった。ウォーシュ議長はインフレ計測方法の見直しとFedの情報発信方法の改善も提唱しており、新体制下でのコミュニケーション政策の変化が市場の注目を集めている。

CNBCcnbc.com Yahoo Financefinance.yahoo.com

原油——ブレント100ドル台前半で高止まり、第3四半期に120ドル到達の予測も

ブレント原油は5月現在、100ドル台前半で推移している。ホルムズ海峡危機が深刻化した2026年4月に一時114ドルを超えたのち、米イラン間の停戦交渉開始の報道を受けて若干軟化したが、交渉の本格的な進展がないまま高止まりが続いている。封鎖前は60ドル台だったブレント原油は4月7日時点で112.95ドルに達しており、コモディティ市場では第3四半期中に120ドルへの上昇を予測する声も複数出ている。原油・LNG・ナフサ価格の高止まりが日本の製造業および家計の双方に重くのしかかっており、日本の経済調査機関は現在の状況を1970年代のオイルショックを超える規模の供給制約になり得ると警告している。

三井住友DSアセットマネジメントsmd-am.co.jp ダイヤモンド・オンラインdiamond.jp

米国株——S&P500は5月19日に0.67%安、インフレ懸念が上値を抑制

5月19日のニューヨーク株式市場は、米イラン交渉に関する報道が限定的となるなかで主要3指数がそろって小幅安となった。S&P500は前日比0.67%安の7334ポイント前後で引け、ダウ平均が0.65%安、ナスダックが0.84%安。AI関連株が午後に買い戻されたことで引けにかけて下げ幅を縮小した。JPモルガン・チェースはS&P500の2026年末目標を7600ポイントに引き上げており、ウォール街は総じて強気姿勢を維持しているが、インフレ再加速と利下げ期待の消滅が上値を抑える構図となっている。

株式投資の歩みkabukiso.com


企業・産業

ベッセント米財務長官訪日——日米経済連携と円安問題を協議

スコット・ベッセント米財務長官は5月11-12日に訪日し、高市首相、片山財務相、赤澤経産相、茂木外相らと相次いで会談した。2025年7月の日米合意に基づく投資プログラムの進捗、重要鉱物の共同確保、および5月14-15日に予定されていた米中首脳会談に先立つ日米連携確認が主な議題となった。為替問題については「望ましくない過度な変動への対処における両国の連携は揺るぎない」との共同メッセージを発信し、過度な円安への牽制姿勢を維持した。財務長官訪日が通貨当局の意思疎通に有効との評価がある一方、根本的な円安解消には日銀の追加利上げが不可欠との認識が市場に広まっている。

ジェトロjetro.go.jp 日本経済新聞nikkei.com

ラピダスへの民間出資が1676億円に拡大——次世代半導体の国産化が加速

ラピダスへの民間出資額は32社からの合計1676億円に達し、当初目標の1300億円を大きく上回った。同社が取り組む2ナノメートル世代の先端ロジック半導体は、生成AIやAIロボティクスに不可欠とされており、2026年内の試作ライン稼働に向けた準備が進んでいる。TSMC熊本工場(JASM)では第2工場への3nmライン導入が発表済みで、ソニー・デンソー・トヨタ自動車が出資するJASMは2024年12月に稼働を開始している。国内外の半導体メーカーによる国内投資の集中が、産業構造の転換と雇用創出の両面で重要な役割を果たしつつある。

SBI証券sbisec.co.jp 東京エレクトロンtel.co.jp

グローバル半導体市場——2026年の規模は前年比63.9%増の1.3兆ドル超へ

Gartnerの予測によれば、2026年の世界半導体市場規模は前年比63.9%増の約1兆3202億ドルに達する見通しで、AI向けデータセンター投資が引き続き成長を牽引している。マイクロソフト・グーグル・メタ・アマゾンの4社だけで2026年の設備投資合計は6800億〜7200億ドルに達すると推計されており、AI学習・推論チップへの需要は高止まりしている。日本企業では材料・製造装置分野で東京エレクトロン・信越化学工業・レーザーテックなどが恩恵を受けており、円安も輸出企業の業績を下支えしている。2027年には市場規模が1兆5545億ドル(前年比17.7%増)に拡大する予測もあり、中長期的な投資サイクルは堅調に維持される見通しだ。

日経ビジネスbusiness.nikkei.com

中国経済——成長目標4.5〜5%のなかでK字型の回復、対米停戦が下支え

中国の2026年経済成長目標は4.5〜5%に設定されており、2025年の5.0%達成を受けてやや下方修正されている。年初の内外需は好調な滑り出しを見せたが、雇用調整圧力の継続と不動産不況という構造的課題が重なり、景気は「K字型」の様相を呈している。対米関係では2025年10月の首脳会談を経た相互関税停止合意が下支えとなっており、米中間の直接的な貿易衝突は短期的に回避されている状況だ。ただし米国内での新関税導入の動きや、半導体・AIに関する対中輸出規制の継続が中長期的な不確実性を高めており、外需依存から内需拡大への転換という習近平政権の経済目標の実現は依然として道半ばだ。

第一ライフ資産運用経済研究所dlri.co.jp 三菱総合研究所mri.co.jp