政治経済

米中首脳会談と中東停戦交渉が揺さぶる世界秩序、日本は62,000円台株高と夏の補正予算判断へ

トランプ・習近平が北京で「建設的戦略安定関係」を宣言する一方、イラン停戦交渉は難航し原油高と円安圧力が日本経済を下から揺さぶる1週間となった。

Executive Summary

  • 米中首脳会談(5月13〜15日、北京)でトランプ・習近平両首脳が「建設的戦略安定関係」を宣言し、一部品目の関税引き下げで合意。2年越しの貿易戦争に部分的な区切り
  • イラン停戦交渉は停滞。ホルムズ海峡の実質封鎖が続き、WTI原油は1バレル103ドル超で推移。日本の物価・財政に直撃
  • 日経平均が5月7日に終値6万2,833円と史上最高値を更新、上げ幅3,320円も過去最大。米半導体株高と停戦期待が重なった
  • ベッセント米財務長官が5月11〜13日に訪日し高市首相・植田日銀総裁と会談。円安是正の焦点は為替介入よりも日銀利上げに集約
  • 政府は夏場の電気・ガス料金補助と2026年度補正予算の編成を5月中に判断へ

国内政治・経済

政府、夏の電気・ガス補助と補正予算編成を5月中に判断

中東情勢の混乱に伴うエネルギー価格の高騰を受け、政府は夏場の電気・ガス料金補助の実施を検討に入った。2026年度補正予算案の編成を月内にも判断する方針で、予備費の積み増しのみにとどめる「最小限案」と、電力・ガス補助を盛り込んだ「本格補正案」の二つの選択肢が浮上している。標準家庭で月2,000〜3,000円程度の負担軽減を見込む案が軸とされる。

ホルムズ海峡の封鎖が2月28日に始まって以来、国内ではエネルギーコストの上昇が続いており、航空燃料の不足や住宅設備の受注停止が実体経済に波及している。政府は2026年1〜3月分の補助に5,296億円を充てており、夏以降の対応が財政運営上の焦点となっている。昨年度(2025年度)の補正予算は18.3兆円規模で成立しており、今年度は規模を絞ったうえで機動的な対応を取る構えとみられる。

日本経済新聞nikkei.com

経産省、AI・半導体に前年比3.7倍の1.2兆円投入。ラピダスへの追加支援も決定

経済産業省は2026年度予算において、AI・半導体分野への支援額を前年度当初比3.7倍の1兆2,390億円に拡大した。このうちラピダスへの追加出資として1,500億円、研究開発補助に6,300億円程度を充てる計画で、政府の累計支援額はおよそ2.6兆円に達する。

2024年11月に策定された「AI・半導体産業基盤強化フレーム」に基づき、政府は2030年度までの7年間で10兆円超の公的支援を行い、10年間で50兆円を超える官民投資を促す方針を掲げている。経済波及効果は160兆円超と試算されている。2026年度以降は毎年1兆円規模を当初予算で確保し、補正予算頼みの単年度主義から脱却して継続的に資金を供給する体制へ移行した。AIや半導体を含む17分野が「官民重点投資」の対象として指定されており、政府の産業政策が一段と強化されている。

経済産業省meti.go.jp 北海道新聞hokkaido-np.co.jp

上場企業2026年3月期純利益、5年連続過去最高を更新

2026年3月期の上場企業の純利益は前期比1%増となり、5年連続で過去最高を更新した。AI需要を取り込む半導体・部材セクターや、金利上昇の恩恵を受ける銀行セクターが業績をけん引した。2027年3月期については純利益が57.6兆円と前期比4%増え、6年連続で最高を更新する見込みとされている。

372社を対象とした業績予想では、2026年度の売上高が前年度比3.4%増、営業利益は13.5%増、経常利益は12.6%増、純利益は14.6%増という増収増益が見込まれている。非中核事業の売却や資本効率改革が利益率を押し上げており、市場では2026年度の業績回復への期待が株価を下支えする要因となっている。

日本経済新聞nikkei.com

高市政権、少数与党で予算・政策運営を継続。衆参の勢力図が政策判断を制約

高市政権は2025年秋の衆院選で一定の議席を確保したものの、衆院では過半数(233)ギリギリ、参院では少数与党の状況が続いており、野党の協力なしに重要法案を通すことが困難な状況にある。エネルギー補助の補正予算編成をはじめ、AI・半導体振興策、外交・安全保障政策の国内調整において、連立工作や野党協議が不可欠となっている。2026年夏以降の選挙日程をにらみ、与党内でも政権の持続性をめぐる議論が続く。

JBpressjbpress.ismedia.jp


マーケット・金融

日経平均、5月7日に終値62,833円で史上最高値。上げ幅3,320円も過去最大

5月7日の東京株式市場で、日経平均株価は前営業日比3,320円高(5.58%高)の6万2,833円で取引を終え、終値ベースの史上最高値を更新した。一時6万3,000円台に乗せる場面もあり、単日の上げ幅としても過去最大を記録した。SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)が連日で最高値を更新したことを受け、半導体関連株が相場全体をけん引した。

上昇の背景には、米中首脳会談への期待感や、ウクライナ停戦の動きに対するリスクオン心理の高まりがあった。野村証券は日経平均の上値メドを6万5,000円台と引き上げており、上振れシナリオでは2026年末に7万円台突破の可能性も示唆している。25日移動平均線との上方乖離率が10%に達するなど、テクニカル面での過熱感も意識されつつある。

日本経済新聞nikkei.com 野村証券nomura.co.jp

ドル円157円台後半で推移。ベッセント訪日後も構造的円安は継続

ドル円相場は5月14日17時時点で前日比7銭円安・ドル高の1ドル=157円91〜92銭で推移し、同日12時すぎには158円の節目に迫る157円99銭をつける場面もあった。大型連休中に日本政府が円買い介入を実施したとみられるが、その効果は限定的で、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待後退と日本の低金利が重なる構図が続いている。

ベッセント米財務長官は訪日後、「為替市場における望ましくない過度な変動に対処する両国の意思疎通と連携は今後も揺るぎない」とSNSに投稿した。市場関係者の間では、ベッセント長官が為替介入よりも日銀の追加利上げによる円安修正を期待しているとの見方が広がっており、日銀の次の利上げ判断が円相場の最大の焦点となっている。

日本経済新聞nikkei.com 野村総研nri.com

日銀、4月会合で政策金利0.75%に据え置き。中東リスクと国内物価の二重圧力を精査

日本銀行は4月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%に据え置いた。ホルムズ海峡の実質封鎖に伴うエネルギー価格の高騰が国内物価に与える影響を見極める必要があると判断したものとみられる。市場では2026年前半のうちに追加利上げが実施される可能性が引き続き織り込まれているが、タイミングは為替動向や中東情勢の進展次第でずれ込む可能性がある。植田日銀総裁はベッセント米財務長官との会談においても、物価と賃金の動向を踏まえた正常化路線を継続する姿勢を示したとされる。

日本銀行boj.or.jp

ベッセント米財務長官、日本訪問。高市首相・片山財務相・植田日銀総裁と会談

スコット・ベッセント米財務長官は5月11日から13日にかけて日本を訪問し、高市早苗首相、片山財務相、植田和男日銀総裁と相次いで会談した。会談後、ベッセント長官はSNSで「日米間の強固な経済パートナーシップを確認できた」と発信し、為替の過度な変動への対処で両国が連携を続けることを確認したと明らかにした。市場では、同長官が円安是正の手段として日銀の追加利上げをより支持しているとの見方が優勢で、為替介入を巡る日米の神経戦は続いている。日米貿易交渉の進捗も焦点となっており、為替・通商・金融政策の3点が絡む複合的な日米経済外交の局面を迎えている。

日本経済新聞nikkei.com 野村総研nri.com


国際政治・地政学

米中首脳会談(北京)、「建設的戦略安定関係」を宣言。一部関税引き下げで合意

トランプ米大統領は5月13日から15日にかけて北京を訪問し、習近平国家主席と首脳会談を行った。両首脳は二国間関係を「米中建設的戦略安定関係」と新たに位置付けることで一致し、今後3年以上にわたる戦略的指針とした。中国は貿易促進に向けて一部品目の関税引き下げで米国と合意したと発表し、トランプ大統領は「米中関係はかつてないほど良くなる」と表明した。

2日目の協議では台湾問題をめぐり習近平主席がトランプ大統領に警告を発する場面もあったが、イランのホルムズ海峡開放に向けた協力や、中東情勢・ウクライナ危機・朝鮮半島問題に関する意見交換が行われた。また、2026年11月にAPEC首脳会議を中国・深セン市で、2026年12月のG20サミットを米国・マイアミで開催し成功させることで一致した。2025年の90日間関税休戦合意から1年が経過する中、段階的な関係正常化が進みつつある。

ジェトロjetro.go.jp Bloombergbloomberg.com

イラン停戦交渉、トランプ大統領が回答を「受け入れられない」と拒否

イランは米国が提示した停戦案への回答を提出したが、核開発計画の最終的な取り扱いや高濃縮ウラン備蓄に関する事前確約を欠いた内容にとどまった。トランプ大統領は5月10日、「全く受け入れられない」と強く反発し、交渉は暗礁に乗り上げた状態が続いている。イランは軍事行動の終結を先行させ、その後ホルムズ海峡を段階的に開放する案を提示したが、米国はイランの核能力の完全排除を先決条件として求めている。

トランプ大統領は5月5日に海峡での船舶通航支援作戦「プロジェクト・フリーダム」を一時停止すると発表し、「大きな軍事的成功」と「合意への大きな進展」があったと述べたが、その後も交渉は進展していない。イスラエルのネタニヤフ首相は「大きな成果はあったが、まだ終わっていない」と述べており、イランの核能力の完全排除を戦闘終結の条件としている。ホルムズ海峡の実質的な封鎖は2月28日に始まり、2か月半を超えており、日本への原油・LNG供給や航空燃料供給にも影響が生じている。

ジェトロjetro.go.jp ジェトロjetro.go.jp

ロシア・ウクライナ、3日間停戦を実施も相互に違反を主張

トランプ米大統領は5月8日、自身の仲介によりロシアとウクライナが5月9日から11日にかけて3日間の停戦に合意したと発表した。対ドイツ戦勝記念日(5月9日)に合わせた停戦期間中、両国はそれぞれ1,000人の捕虜を交換した。しかし双方が互いに停戦を守っていないと主張しており、本格的な停戦実現の困難さを改めて示す形となった。

米国が直接の仲介に入ったことで一定の対話の枠組みは維持されているが、領土問題や安全保障保証をめぐる根本的な対立は解消されていない。紛争の長期化は欧州のエネルギー安定供給やアジア太平洋地域の安全保障環境にも波及しており、日本政府はウクライナ支援と外交的関与を継続している。2026年内の本格的な和平合意実現は困難との見方が専門家の間で多数を占める。

時事通信jiji.com NHK NEWS WEBnews.web.nhk

サウジアラビアとイラン、戦後見据えた相互不可侵構想を協議

サウジアラビアとイランが、イスラエル・米国との衝突を見据えた中東戦後秩序の構築に向け、相互不可侵の枠組みに関する協議を開始したとフィナンシャル・タイムズが報道した。中国の仲介で2023年に国交を正常化した両国が、今次紛争の終息後を見据えた安全保障体制の構築に動いていることは、中東地政学の新たな構図を示している。停戦交渉が膠着する中でも地域大国間の外交が並行して進んでいることは、紛争終結後の秩序形成をめぐる主導権争いが始まっていることを示唆する。

ニューズウィーク日本版newsweekjapan.jp


国際経済・マーケット

原油価格、WTI103ドル超で高止まり。ホルムズ封鎖が世界エネルギー市場を圧迫

WTI原油先物は5月15日時点で1バレル103.5ドルを超えており、ブレント原油は2026年第2四半期に106ドル前後で推移すると見込まれている。2026年5月12日発表の短期エネルギー見通しでは、ブレント原油の年間平均を2026年95ドル、2027年79ドルと予測している。ホルムズ海峡の実質封鎖が始まった2月下旬以降、原油価格は一時141ドルを突破する場面もあり、世界的なエネルギーコストの上昇が続いている。

原油高はグローバルなインフレを長期化させる要因となっており、特に米国ではエネルギーコストが前年比17.9%上昇し4月のCPI(消費者物価指数)を3.8%に押し上げた。日本でも輸入コストの増加が企業収益を圧迫しており、政府の電気・ガス補助の継続が求められる状況にある。

Global SCMglobal-scm.com ダイヤモンド・オンラインdiamond.jp

米4月CPI、3.8%に加速。イラン危機に伴うエネルギー高が主因

米国の4月CPI(消費者物価指数)の前年同月比は3.8%となり、2023年5月以来の高水準に上昇した。エネルギー価格が前年比17.9%上昇したことが主因で、ホルムズ海峡危機による供給制約が価格に直結している。コアインフレは2.8%で、食料(2.3%)や住居費(3.3%)も上昇した。市場では5月・6月のCPIが4%に達する可能性を指摘するエコノミストも多く、FRBの年内利下げ実施がさらに困難になるとの見方が広がっている。OECDは2026年の米国インフレを4.2%と予測しており、FRB自身の見通しを大幅に上回る。

U.S. Bureau of Labor Statisticsbls.gov CNBCcnbc.com

FRB、3会合連続で金利据え置き。「緩和バイアス」を声明に明記も反対意見相次ぐ

連邦公開市場委員会(FOMC)は4月29日会合で、フェデラルファンド金利誘導目標を3.50〜3.75%に据え置いた。2026年3月の前回会合から3会合連続の据え置きとなる。声明文には「追加的な(additional)」政策調整という表現が盛り込まれ、市場はこれを緩和バイアスの示唆と解釈した。一方、ダラス連銀のローガン総裁、クリーブランド連銀のハマック総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の3名が声明への緩和バイアス明記に反対意見を表明しており、利下げ時期をめぐる内部対立が鮮明となっている。なお、パウエルFRB議長の任期は5月15日に終了し、後継にウォルシュ氏が議会承認を経て就任することが見込まれている。

Federal Reservefederalreserve.gov CNN Businesscnn.com

中国、1〜3月GDP成長率5.0%。輸出は前年比21.8%増と大幅拡大

中国の2026年1〜3月期実質GDP成長率は前年同期比5.0%増と、政府目標(4.5〜5.0%)の上限に達し市場予想を上回った。1〜2月の輸出額は前年同期比21.8%増と大幅に拡大し、米国以外への多様な輸出先開拓が奏功した形だ。地域別ではアフリカ向け49.8%増、ASEAN向け29.2%増、EU向け29.2%増、インド向け19.9%増、南米向け16.4%増と広範に拡大している。

ただし、2026年の通年成長率は4.4〜4.5%へ減速するとの見方が多く、不動産不況や雇用調整圧力など構造的課題は残存している。内需は依然として弱く、消費の自律的な回復への道筋は不透明な「K字型」の様相を呈している。米中首脳会談での関税合意が需要を喚起する効果にも注目が集まるが、実体経済への波及には時間を要するとみられている。

ピクテ・ジャパンpictet.co.jp 日本経済新聞nikkei.com

EUのGDP成長率、2026年見通しは1.4%。インフレ鈍化と労働市場の堅調が下支え

欧州委員会は2026年のEU実質GDP成長率を1.4%と予測している。堅調な労働市場と賃金上昇による購買力改善、インフレの鈍化が内需を支える構図だ。ユーロ圏インフレ率は2026年に1.7%まで低下する見通しで、ECBの政策金利は据え置き基調が続く。EU全体の失業率は5.7%と歴史的な低水準が見込まれており、個人消費は前年比1.6%増と予測されている。復興・強靭化ファシリティ(RRF)をはじめとするEU基金が財政引き締めの影響を緩和し、加盟国の成長を支援している。ただし、中東エネルギー危機の長期化が欧州のエネルギーコストを押し上げるリスクは依然として残る。

ジェトロjetro.go.jp


企業・産業

アジア系ファンドの日本企業買収提案、政府の安全保障審査で判断が分かれる

アジア系投資ファンドによる日本企業への買収提案2件について、政府の安全保障上の審査結果が分かれたことが明らかになった。外国資本による日本の戦略的産業への投資をめぐっては、対内直接投資の促進と安全保障の両立が政策上の課題となっており、承認基準の透明性向上を求める声も出ている。AI・半導体・防衛関連産業への外資参入に関しては、経済安全保障推進法の枠組みの下で事前審査が厳格化されており、今後も審査結果が注目される案件が続く見通しだ。

日本経済新聞nikkei.com

米中貿易、関税戦争「休戦」2年で貿易3割減。AI分析で7,000品目の関税見直し開始

米国と中国の間の高関税適用が続く中、米中間の貿易量は関税戦争休戦前と比較して3割程度減少したとの分析が示されている。7,000品目を超える品目についてAIを活用した詳細な関税影響分析が進められており、今回の首脳会談での合意を受けた関税見直しの対象品目の選定に活用される予定だ。中国は農産物貿易の拡大でも米国と合意したとしており、米国の農業州への経済効果が期待される。日本を含む第三国企業にとっても、米中貿易の正常化がサプライチェーンの再構築に影響を与えるため、動向への注視が続いている。

日本経済新聞nikkei.com

中東・イラン危機で物価高が生活用品にまで波及。食品包装のモノクロ化も

ホルムズ海峡の危機に伴うエネルギー価格の上昇と物流コストの増加が、生活用品にまで影響を及ぼしている。一部の食品メーカーでは、コスト上昇に対応するためパッケージデザインをカラー印刷からモノクロへ変更する動きが出ており、消費者に物価高が目に見える形で影響していることが報道されている。政府は電気・ガス補助の継続検討とともに、2026年度補正予算を通じた物価高対策を検討しているが、エネルギー輸入コストが高止まりする限り、家計への圧力は続く見通しだ。再生可能エネルギーや国産エネルギー源の活用促進による中長期的なエネルギー安全保障の強化を求める声が産業界からも高まっている。

テレビ朝日 報道ステーションyoutube.com