ヴェネチア開幕、ミース賞発表、ゴッホ上陸——世界のアートが動く
第61回ヴェネチア・ビエンナーレが3日前に開幕し、ミース・ファン・デル・ローエ賞やクーパー・ヒューイット・ナショナル・デザイン賞の受賞者が相次ぎ発表される中、東京・ロンドン・サンフランシスコでも注目の展覧会が続々と幕を開けた一週間。
Executive Summary
- 第61回ヴェネチア・ビエンナーレ「In Minor Keys」が5月9日に開幕。故コヨ・クオ(Koyo Kouoh)の遺志を継いだ展覧会はジャルディーニとアルセナーレで11月まで続く
- EUミース・ファン・デル・ローエ賞2026の授賞式がバルセロナで5月12日に開催。ベルギー・シャルルロワの展示場改修が最優秀賞を受賞
- ICP写真集フェスト(5/8-10、ニューヨーク)、フォト・ロンドン(5/14-17)が相次ぎ開催、写真メディアの祭典が世界二都市で同時進行
- 大英博物館がパルテノン大理石彫刻のアテネ返還を本格開始、文化財返還の世界的転換点として注目を集める
現代アート・展覧会
第61回ヴェネチア・ビエンナーレ「In Minor Keys」——コヨ・クオの遺言、開幕へ
第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展「In Minor Keys」が5月9日、イタリア・ヴェネチアのジャルディーニとアルセナーレで開幕した。会期は11月22日まで。本展のキュレーターであったコヨ・クオ(Koyo Kouoh)は2025年5月に急逝したが、ラ・ビエンナーレ・ディ・ヴェネツィアは彼女の家族の全面的な支持のもと、その構想をそのまま実現する道を選んだ。クオがアーティスティック・ディレクターとして率いたキャリアの集大成となるこの展覧会は、生前最後まで情熱を注いだ仕事の証として、世界中から関心を集めている。
「In Minor Keys」というタイトルは、フリージャズのアンサンブルが不協和と共鳴を往来するように、多数の声が小さな調性で重なり合う状態を指す。クオが選んだ110名の参加者——個人、デュオ、コレクティブ、アーティスト主導の組織——は地理的に広範な出身地から集められており、実践の共鳴と親和性に着目した配置がとられている。7か国(ギニア共和国、赤道ギニア共和国、ナウル共和国、カタール、シエラレオネ共和国、ソマリア連邦共和国、ベトナム社会主義共和国)が初参加を果たした点も歴史的意義を持つ。開幕日の来場者数は約1万人と、2024年比で10%増を記録した。
審査委員会は今版から構成を一新し、クオ自身が生前に希望した「全女性構成」が実現した。委員長はアソシアサォン・クルトゥラル・ビデオブラジルの創設者でアーティスティック・ディレクターのソランジュ・オリヴェイラ・ファルカス(Solange Oliveira Farkas)が務める。また、今版では従来の審査委員会による授賞ではなく、会期中に来場者が投票する「来場者のライオン賞」(金・銀)が新設されており、授賞式は閉幕時に行われる予定だ。
La Biennale di Venezialabiennale.org
The Art Newspapertheartnewspaper.com
荒川ナッシュ医「草の赤ちゃん、月の赤ちゃん」——日本館、参加型インスタレーションで挑む
第61回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館では、荒川ナッシュ医(Ei Arakawa-Nash)による参加型インスタレーション「草の赤ちゃん、月の赤ちゃん(Grass Babies, Moon Babies)」が開催されている。荒川は福島県いわき市出身で、1998年に渡米してロサンゼルスを拠点に活動するクィア・パフォーマンスアーティストだ。「クィア・フラワー」をモチーフに、身体性・記憶・共同体のありようを問いかける作品群で知られる。
日本館の展示では、来館者が約200体の赤ちゃん人形を抱えながら会場を巡る体験型インスタレーションが展開される。人形を「持つ」という行為を通じて、ケアや依存・責任の感覚を鑑賞者に直接委ねる設計だ。日本館では今版から初めての共同キュレーター制が敷かれ、高橋瑞木と堀川理沙がともにキュレーションを担う体制となった点も注目に値する。日本館設立70周年という節目の年に、前例のない協働体制で臨んだ意図は、ダイアローグとしての展覧会づくりにある。
ADF Web Magazineadfwebmagazine.jp
Tokyo Art Beattokyoartbeat.com
マリーナ・アブラモヴィッチ「Transforming Energy」——ヴェネチア・アッカデーミアで史上初の個展
パフォーマンスアートの先駆者マリーナ・アブラモヴィッチ(Marina Abramović)が、ヴェネチア・アッカデーミア美術館(Gallerie dell’Accademia di Venezia)で「Transforming Energy」を開催中だ(5月6日〜10月18日)。同館で存命中の女性アーティストに大規模個展が開かれるのは史上初であり、アブラモヴィッチ自身の80歳の誕生日を記念して企画された。ビエンナーレ開幕(5月9日)と時期を合わせたことで、ヴェネチアに滞在する世界中の美術関係者が一挙に訪れている。
展覧会は美術館の常設コレクション展示室と仮設展示スペースの両空間にまたがって展開される——同館の歴史上初めての試みだ。訪問者は「移行の物体(Transitory Objects)」と呼ばれるクリスタルが埋め込まれた石製のベッドや構造物の上に横たわり・座り・立つことで、アブラモヴィッチが「エネルギー伝達」と呼ぶ体験に参加できる。《感知不可能(Imponderabilia)》(1977)、《リズム0(Rhythm 0)》(1974)、《バルカン・バロック(Balkan Baroque)》(1997)、《骸骨を運ぶ(Carrying the Skeleton)》(2008)などの映像も展示される。特筆すべきは《ピエタ(ウライとともに)》(1983)が、ティツィアーノの《ピエタ》(c.1575-76)と対面して配置されている点で、ルネサンスの悲嘆と超越の図像を現代的視点で読み替える試みが展開されている。
Gallerie dell’Accademiagallerieaccademia.it
The Art Newspapertheartnewspaper.com
ピッツバーグ・カーネギー・インターナショナル2026「If the word we」——連帯と修復を問う
アメリカ最長歴史を誇る国際現代美術展、第59回カーネギー・インターナショナル(Carnegie Museum of Art、ピッツバーグ)が5月2日に開幕した。会期は2027年1月3日まで。タイトル「If the word we」はエジプトの作家ハイタム・エル=ワルダニー(Haytham el-Wardany)のエッセイから引かれており、世界的な危機のなかで人々が共同性と修復をいかに問い直すかを軸に据えている。
企画を担当したのはライアン・イノウエ(Ryan Inouye)、ダニエル・A・ジャクソン(Danielle A. Jackson)、リズ・パーク(Liz Park)の3名で、計61名・組のアーティストとコレクティブが参加。なかでも30以上の新規委嘱作品が含まれており、トークワセ・ダイソン(Torkwase Dyson)による没入型アニメーション(カミン・サイエンス・センターのプラネタリウムで公開)、アルトゥロ・カメヤ(Arturo Kameya)とクラウディア・マルティネス・ガライ(Claudia Martínez Garay)による共同インスタレーション(マットレス・ファクトリー)などが注目を集めている。ジャスリーン・カウル(Jasleen Kaur)、リ・イーファン(Li Yi-Fan)、ビアトリス・ゴンサレス(Beatriz González)らも参加する。
Carnegie Museum of Artcarnegieart.org
テート美術館YBA展——国立新美術館でまもなく閉幕
国立新美術館で2月11日から開催されてきた「テート美術館 — YBA & BEYOND 世界を変えた 90s 英国アート」が5月11日をもって東京会期を終了する。約60名の作家による約100点の作品を通じて、1988年にダミアン・ハースト(Damien Hirst)らが起こした「フリーズ」展に端を発するヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)の潮流と、その後の英国美術史の軌跡を検証した。ジュリアン・オピー(Julian Opie)、ルベイナ・ヒミド(Lubaina Himid)、スティーヴ・マックイーン(Steve McQueen)、トレイシー・エミン(Tracey Emin)、ヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)らの作品が集結し、3カ月の会期を通じて多くの観覧者を集めた。本展は2026年6月より京都市京セラ美術館に巡回する。
MoMAマルセル・デュシャン大回顧展——50年ぶりの全貌
ニューヨーク近代美術館(MoMA)で4月12日に開幕した「マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)」展が好評を博している(会期は8月22日まで)。50年以上ぶりとなる北米での大規模回顧展で、1900年から1968年にわたる約300点の作品を通じてデュシャンの多面的なキャリアを総覧する。
絵画、彫刻、映像、写真、ドローイング、印刷物など全メディアにわたる出品リストは、《泉》(1917)、《L.H.O.O.Q.》(1919)、《階段を降りる裸体 No.2》(1912)、実験映像《貧血性シネマ(Anemic Cinema)》(1926)などほぼすべての代表作を網羅する。展覧会の核のひとつは「ヴァリーズの箱(Box in a Valise)》(1935-41)に関する最大規模の展示で、未公開の準備資料も初公開される。なお《大ガラス》と《遺作》の2点はフィラデルフィア美術館から移動不可のため出品されていない。本展はニューヨーク後にフィラデルフィア、さらに2027年にはパリ(ポンピドゥー・センター、グラン・パレ共同主催)へ巡回が予定されている。
SFMOMAマティス「婦人帽子を被った女性」展——1905年のスキャンダルを再演
サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)で5月16日から「マティスの《婦人帽子を被った女性》:ある近代的スキャンダル(Matisse’s Femme au chapeau: A Modern Scandal)」が開幕する(会期は9月13日まで)。アンリ・マティス(Henri Matisse)が妻アメリ(Amélie)を描いた1905年のこの作品は、大胆な色彩と粗い筆致によってパリのサロン・ドートンヌで物議を醸し、フォービスムの起点となった。
展覧会の中心には、1905年サロン・ドートンヌ第7ギャラリーのオリジナル展示の再現がある——1905年の初公開以来、最多の出品作を一堂に集め、当時同室に展示された10名のアーティストの作品をすべて揃えた野心的な試みだ。本作は1926年にマティスから石橋財団(現アーティゾン美術館)に売却される以前、マイケル・スタイン(Michael Stein)らコレクターを経由して世界的知名度を得た。開幕日(5月17日)には来館者に帽子の着用を奨励するイベントも設けられるという。
メトロポリタン美術館がロッソ・フィオレンティーノの「再発見作」を収蔵
メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)が、フィレンツェ・ルネサンスの画家ロッソ・フィオレンティーノ(Rosso Fiorentino、1494-1540)の再発見された作品《聖ヨハネ福音者を伴う聖母子(Madonna and Child with Saint John the Evangelist)》(1512/13年作)を収蔵した。数世紀にわたって所在不明とされていた本作は、画家がわずか十代の時に描いたとされる初期の油彩画。近年の洗浄作業により隠れていた聖ヨハネ像が明らかになり、美術史的な再評価がなされた。ブロンツィーニ=ヴェンダー家(Bronzini-Vender family)から寄贈を受けた。
また、ナショナル・ギャラリー・オブ・アート(ワシントンDC)も、ニューヨーク在住のパキスタン系アーティスト、サルマン・トゥール(Salman Toor)による円形油彩画《さすらう乞食たち(Wandering Beggars)》(2022)を収蔵した。同館にトゥールの作品が入るのはこれが初めてで、ブロンツィーニ=ヴェンダー家から寄贈された。
The Art Newspapertheartnewspaper.com
デザイン・建築
EUミース・ファン・デル・ローエ賞2026——ベルギーの展示場改修が最優秀賞
欧州連合建築賞であるEUミース・ファン・デル・ローエ賞2026(EU Prize for Contemporary Architecture / Mies van der Rohe Awards)の授賞式が5月11日〜12日にバルセロナのミース・ファン・デル・ローエ・パビリオンで開催された。今版では計410件のノミネート作品のなかから受賞作が決定した。
最優秀賞(Architecture Prize)は、ベルギー・シャルルロワにある「パレ・デ・エクスポジシオン(Palais des Expositions)」の改修プロジェクトが受賞。ブリュッセルを拠点とするAgwAとゲントを拠点とするアーキテクテン・ヤン・デ・ヴォイデル・インジュ・フィンク(Architecten Jan de Vylder Inge Vinck)の共同設計によるもので、産業遺産の再活用という観点から高く評価された。新興建築賞(Emerging Architecture Prize)は、スロベニア・リュブリャナの国立劇場ドラマ部門のための「仮設空間(Temporary Spaces for the Slovenian National Theatre Drama)」を設計したローカルスタジオ、ヴィディッチ・グロハール・アルヒテクティ(Vidic Grohar Arhitekti)に贈られた。
クーパー・ヒューイット・ナショナル・デザイン賞2026——フリダ・エスコベドら受賞
スミソニアン・デザイン・ミュージアム、クーパー・ヒューイット(Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museum)が2026年度ナショナル・デザイン賞(National Design Awards)の受賞者を発表した。授賞ガラは5月19日にニューヨークで開催される。
建築部門は2006年創業のフリダ・エスコベド・スタジオ(Frida Escobedo Studio)が受賞。メキシコシティとニューヨークに拠点を置く同スタジオは、集合住宅から一時的なアートインスタレーション、公共彫刻、書籍制作まで幅広いスケールと領域にわたる実践を展開している。また気候行動部門はエストゥディオ・テディ・クルス+フォナ・フォーマン(Estudio Teddy Cruz + Fonna Forman)が、インテリアデザイン部門はチャーラップ・ハイマン&ヘレロ(Charlap Hyman & Herrero)が受賞。ランドスケープ部門はテン・アイク・ランドスケープ・アーキテクツ(Ten Eyck Landscape Architects)、新進デザイナー部門はマタフォーマ(Mattaforma)、ファッションデザイン部門はジョシュ・タフォヤ(Josh Tafoya)などが選出された。
A’デザイン賞2026受賞発表——115か国1,683件が受賞
国際デザイン・コンペティション「A’ Design Award & Competition」の2025-2026年度の受賞結果が5月11日に発表された。115か国162カテゴリから計1,683件が受賞し、建築・空間デザイン、工業デザイン、ファッション、グラフィックス、テクノロジーシステム、アート・文学など多岐にわたる分野を網羅した。
建築部門では、台湾・屏東県政府によるキング・ボート文化博物館(King Boat Cultural Museum)が特筆される。東港(Donggang)に位置する本施設は、台湾初の「王船祭(King Boat Ceremony)」に特化した文化センターで、3年ごとに行われる儀式の霊的・海洋的なイメージから形態を着想し、歴史の器として設計された。空間デザイン部門では旧工場の鉄骨ドームをそのまま残しながらガラス製ワインセラーや銅製かまどを挿入した高級レストランのリノベーションが注目を集めた。
スノヘッタ+USM「Renaissance of the Real」——ミラノ・デザイン・ウィークの呼吸する空間
ノルウェーの建築・デザインスタジオ、スノヘッタ(Snøhetta)とスイスの家具ブランドUSMが、4月20〜26日のミラノ・デザイン・ウィーク2026においてミルチセンサリー・インスタレーション「Renaissance of the Real(リアルの復権)」を発表した。会場はミラノのフォンダツィオーネ・ルイジ・ロヴァーティ(Fondazione Luigi Rovati)。企画は経験デザイナーのアンナベル・シュナイダー(Annabelle Schneider)が担当した。
本インスタレーションはUSMのハラー(Haller)モジュラーシステムを建築的骨格として用い、その外側にパラシュートグレードのポリウレタン膜が内側から膨張・収縮し、まるで生き物が呼吸するような動きを見せる。訪問者は到着時に温かいタオルで迎えられ、アナログオーディオエンジニア、デヴォン・タンブル(Devon Turnbull)のヴァイナル・リスニング・セッションに身を委ねながら、デジタル過多の時代に「物理的存在」の意味を問い直すコンセプチュアルな体験を得る。デジタルへの依存と対置される触覚的・聴覚的空間の提示は、今年のミラノで最も話題を呼んだ展示のひとつとなった。
フランク・ゲーリー大回顧展「The Century of Gehry」——セラルヴェス財団で開幕
ポルトガル・ポルトのセラルヴェス財団(Serralves Foundation)で、建築家フランク・ゲーリー(Frank Gehry)の大規模回顧展「The Century of Gehry」が5月に開幕し、11月まで続く。ゲーリー・パートナーズとゲッティ・リサーチ・インスティテュート(Getty Research Institute)の協力のもと組織され、展覧会はアルヴァロ・シザ設計による財団の翼棟で開催される。
本展は26の代表プロジェクトを軸に構成され、カリフォルニア州サンタモニカの自邸(Gehry House)からビルバオ・グッゲンハイム美術館まで、ゲーリーの設計哲学の変遷を精緻に辿る。実測模型、手描きドローイング、写真、家具作品、彫刻的習作など多様な資料が揃い、完成作品だけでなく「プロセス」に焦点を当てている点が特徴的だ。既製の形態に従わず、素材・構造・形式の慣習を問い続けたゲーリーの思考の核心に迫る内容と評されている。
写真・ビジュアル
フォト・ロンドン2026——オリンピアへ移転、スティーブン・マイゼルが主役
英国最高峰の写真フェア、フォト・ロンドン(Photo London)が5月14〜17日に開催された。今年からサマセット・ハウスを離れ、新たな拠点としてケンジントンのオリンピア(Olympia London)に移転した歴史的転換点でもある。世界各国から90テーブル以上の出版社・ギャラリーが参加し、ニューヨーク、東京、ワルシャワ、台北などのギャラリーに加え、ロンドンのフォトグラファーズ・ギャラリー(The Photographers’ Gallery)、フラワーズ(Flowers)、グッドマン(Goodman)なども出展した。
今年のマスター・オブ・フォトグラフィーはスティーブン・マイゼル(Steven Meisel)。ロンドンで行った初の商業撮影から生まれた希少な肖像作品が特集展示された。また今版では「Source」という新セクションが設けられ、キャリアにおいて十分な機関的評価を受けていこなかった実験的・混合メディアの作家たちに焦点を当てた。映像作品のための専用スクリーニングルームも新設され、ウー・チア=ユン(Wu Chia-Yun)、カロリーナ・バルドマ(Carolina Baldomá)、サラ・ムーン(Sarah Moon)らの映像が上映された。
ICPフォトブック・フェスト2026——90テーブル、2,500人が集うNYの写真書籍祭
ニューヨーク国際写真センター(International Center of Photography、ICP)が第5回フォトブック・フェスト(Photobook Fest)を5月8〜10日に開催した。ローワー・イースト・サイドのミュージアムとスクール全体を会場に、75以上の出版社・ベンダーが90超のテーブルを構え、3日間で約2,500人が来場した。マグナム・フォトス(Magnum Photos)、ルース・ジョインツ(Loose Joints)、マック(MACK)、テームズ&ハドソン(Thames & Hudson)などの大手から、ICP卒業生が設立した独立系レーベルまでが出展。50以上のサイン会、ドロップイン・ワークショップ、フォトブック・スワップ、暗室ツアーなど多彩なプログラムが週末を通じて展開された。
Hyperallergichyperallergic.com
ワールド・プレス・フォト2026年度大賞——ICE拘束の一瞬、キャロル・グジーが受賞
ワールド・プレス・フォト(World Press Photo)の2026年度年間最優秀写真(Photo of the Year)がキャロル・グジー(Carol Guzy、ZUMA Press / iWitness / Miami Herald)の《ICEに引き離されて(Separated by ICE)》に決定し、4月23日にアムステルダムのデ・ニューウェ・ケルク(De Nieuwe Kerk)で発表された。作品は2025年8月26日、ニューヨーク市のジェイコブ・K・ジャヴィッツ連邦ビル前で、移民法廷審問後にICE(移民税関執行局)に拘束されたルイスの瞬間を捉えている。
今年のコンテストには141か国3,747名のフォトグラファーから57,376点の応募があり、最終的に42名の部門賞受賞者から年間大賞が選出された。ガザでの飢餓に直面するパレスチナ人や、グアテマラで性的暴力被害者への正義が実現する場面なども年間大賞のファイナリストに選ばれ、世界が直面する「火災・紛争・移民」というテーマが今年のコンテストを象徴すると報じられた。
World Press Photoworldpressphoto.org
カルチャー・批評
大英博物館、パルテノン大理石彫刻のアテネ返還を本格開始
大英博物館(British Museum)が2026年、「総合返還(Total Return)」と称する方針のもとでパルテノン大理石彫刻のアテネへの返還を本格的に進めていることが明らかになった。英国議会が新たな立法措置を通過させたことで可能となった歴史的な転換で、ベニン・ブロンズのナイジェリア返還も同時進行している。
この動きは数十年にわたる外交的圧力、法廷闘争、学術的批判、そして植民地主義的遺産に対する社会意識の変化が積み重なった結果だ。ギリシャのアクロポリス博物館にはすでに現存する彫刻の一部が保管されており、大英博物館からの返還作品との統合展示が計画されている。同様の動きは大英博物館にとどまらず、フランスをはじめ欧州各地の主要美術館に対して重大な先例を生み出すものとして国際美術界の注目を集めている。植民地時代に蒐集した文化財を抱える世界中の文化機関にとって、「正当性は法律だけでなく社会的評判によっても問われる」という事実を突きつける転機となった。
国内トピック
大ゴッホ展「夜のカフェテラス」——上野の森美術館で5月29日開幕
上野の森美術館(東京・上野公園)で5月29日から「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」東京展が開幕する(会期は8月12日まで)。第1期のメインとなるのは、約20年ぶりの来日となるオランダ・クレラー=ミュラー美術館(Kröller-Müller Museum)所蔵の《夜のカフェテラス(Café Terrace at Night)》(1888)で、ゴッホのアルル時代を代表する傑作だ。出品はゴッホ作品約60点に加え、クロード・モネやピエール=オーギュスト・ルノワールら同時代の印象派画家の作品も展示される。
本展は神戸・福島に続く第3の巡回地で、同展の第2期(2027〜28年)では70年ぶり来日となる《アルルの跳ね橋(The Langlois Bridge at Arles)》の公開も予定されており、息の長い大規模プロジェクトとなっている。入場料は一般2,800円(平日)〜3,000円(土日祝)。開館は日〜木曜9:00〜17:30、金・土・祝は19:00まで。高校生以下は6月30日まで無料。
大ゴッホ展 公式サイトgrand-van-gogh-tokyo.com
アーティゾン美術館モネ展——まもなく閉幕、没後100年の集大成
アーティゾン美術館(東京・京橋)で開催中の「モネ没後100年 クロード・モネ — 風景への問いかけ」が5月24日に閉幕する。フランス・オルセー美術館から代表作41点が来日し、国内の美術館・個人所蔵作品を加えた計約140点を通じて風景画家としてのモネの真髄に迫る構成だ。
印象派を超えた文脈として、同時代の写真・浮世絵・アール・ヌーヴォー工芸との関係性を示す作品配置が展覧会の特徴のひとつ。現代映像作家アンジュ・レッチア(Ange Leccia)によるオマージュ映像作品も会期中を通じて公開された。4月25日には定期休館日の例外として追加開館日を設けるなど混雑への対応が続いており、最終週も多くの来場者が見込まれる。主催はアーティゾン美術館、オルセー美術館、日本経済新聞社、NHK。