ホルムズ閉鎖・日経最高値・米中首脳会談前夜 — 複合危機と機会が交錯する転換点
ホルムズ海峡閉鎖継続による原油市場の緊張が続く中、日経平均は史上最高値圏で推移し、ベッセント米財務長官の訪日と5月14〜15日の米中首脳会談を前に世界経済は重要な分岐点を迎えている。
Executive Summary
- ホルムズ海峡は5月4日以降、実質閉鎖状態が続き、世界の海上原油輸送の約20%が遮断されたまま米・イラン停戦は依然として不安定。
- 日経平均先物は5月9日夜間取引で6万3,760円(前日比+920円)と史上最高値圏を維持し、米・イランの戦闘収束期待が株高を後押し。
- 米国際貿易裁判所が5月7日にトランプ政権の10%包括関税を違法と判断。政権は翌日控訴し、約1,660億ドル規模の関税還付問題が浮上。
- ベッセント米財務長官が5月11日から訪日し、高市首相・片山財務相・植田日銀総裁と相次ぎ会談。為替と関税交渉が主要議題。
- 5月14〜15日にトランプ・習近平首脳会談が北京で予定。イラン問題が主題を占め、米中貿易合意の進展は限定的との見方が強まっている。
国内政治・経済
国家情報会議設置法案、参院で審議入り — 日本の情報機能を根本的に再編
5月8日、国家情報会議設置法案の参院本会議での審議が始まった。高市早苗首相が出席し、趣旨説明と質疑が行われた。同法案は4月23日の衆院本会議で与党に加え中道改革連合・国民民主党が賛成し可決済みで、参院送付後の初の本格審議となる。
法案の核心は内閣官房の内閣情報調査室を「国家情報局」に格上げし、首相を議長とする「国家情報会議」の司令塔機能のもとに各省庁の情報を集約する権限を与えることにある。これまで縦割り構造が批判されてきた日本のインテリジェンス体制を、英米型の統合情報機関に近づける狙いがある。
今国会での成立が有力視されており、成立すれば日本の安全保障・外交情報能力の刷新という点で戦後の枠組みを大きく転換することになる。一方、野党や市民団体からは「国民の情報活動への監視強化につながる」との懸念も示されており、参院審議では情報収集範囲や議会による監視機能のあり方が争点となる見込みだ。
時事通信jiji.com Yahoo!ニュース(毎日新聞)news.yahoo.co.jp
衆院解散、6月が本命か — 高市首相が政権基盤強化へ解散戦略を本格化
高市早苗首相が2026年6月の衆院解散・総選挙を軸に検討を進めているとの見方が政界で広がっている。現在、与党は衆院で過半数233議席ギリギリの状態にあるが、内閣支持率は発足以来60%台を維持しており、選挙環境は相対的に良好とされる。
解散のタイミングとしては、6月下旬の通常国会会期末が最も有力視されているほか、2026年度予算成立後の春、あるいは骨太方針2026の閣議決定後に決断するとのシナリオも存在する。2027年9月の自民党総裁任期を見据えれば、高支持率の維持期間に議席を上積みしておく戦略的合理性がある。
衆院解散・総選挙が実現した場合、「高市トレード」として知られる株高・円安の組み合わせが再び強まる可能性があるとの市場分析も出ており、野村証券など証券各社が4つのシナリオ別の株価影響を試算している。政権与党が大幅に議席を増やせば積極財政の継続が明確化され、日本株にとって追い風となる一方、議席が伸び悩む場合は政策の不確実性が高まるリスクがある。
骨太方針2026の策定始動 — 積極財政継続か財政規律維持かの攻防
政府の経済財政諮問会議は4月13日、「骨太方針2026」の策定に向けた議論を本格的に始動させた。高市首相は「真に骨太で簡潔で分かりやすく、メッセージ性のある内容とする」と指示し、6月の閣議決定を目指す。今回の最大の焦点は、従来の財政健全化目標(基礎的財政収支黒字化)を維持するかどうか、および消費税の取り扱いだ。
2月の衆院選で与党が圧勝したことを受け、食料品に係る消費税率の一時的な引き下げ(2027年度から2年間、年約5兆円規模の家計負担軽減)が検討に乗り上がっており、骨太方針への明記が焦点となっている。一方、財務省は財政規律の維持を強く求めており、財政ファイタンス(国債増発)の拡大に慎重な姿勢を崩していない。
中東情勢による原油価格の高止まりが企業収益・家計の実質所得を押し下げるリスクが顕在化しており、追加の経済対策を盛り込む必要性も高まっている。日銀は2026年度の実質GDP成長率を1.0%(前回見通し0.7%から上方修正)と見ているが、中東リスクや米中貿易摩擦の動向次第で下振れする余地がある。
ベッセント米財務長官、5月11日訪日 — 円安是正と関税交渉が焦点
米国のスコット・ベッセント財務長官が5月11日から3日間の日程で訪日し、高市首相・片山さつき財務相・植田和男日銀総裁と個別に会談する方針が固まった。14〜15日に予定されるトランプ・習近平首脳会談の直前に訪日するため、対中政策の擦り合わせも兼ねる外交的意味合いが大きい。
今回の訪日で最大の焦点は為替問題とみられる。投機的な円売りへの対処と為替介入の日米協調が議題になる見通しで、ベッセント長官は1月にも円安けん制を主導した経緯がある。現在、円は対ドルで不安定な動きを示しており、日本側は円安抑制に向けた協調介入の地ならしを目指しているとされる。
関税交渉についても重要な局面を迎えている。トランプ政権は自動車・鉄鋼・半導体など日本の主要輸出産業に対する関税圧力を維持しており、日本側は「関税交渉で最も先行している国」との米側の評価を生かした早期合意を模索している。今回の会談で進展がみられるかどうかが、5月下旬から6月にかけての日米経済関係の方向性を左右する。
日経まとめnikkeimatome.com 日本経済新聞nikkei.com
日銀、6月利上げ観測が高まる — 0.75%据え置きの次の一手
日本銀行は4月28日の金融政策決定会合で政策金利を0.75%に据え置いた。しかし、市場では次回6月の会合での利上げを予想する声が広がっている。日銀はゴールデンウィーク中の過度な円安を防ぐため、情報発信に工夫を凝らし、6月利上げへの地ならしを行ったとの見方がアナリストの間では多い。
日銀は2026年度の経済見通しを実質成長率1.0%(1月時点の0.7%から上方修正)に引き上げ、インフレ率については中東情勢を反映したエネルギー価格の高騰を注視している。三井住友DSアセットマネジメントの分析によれば、政策金利を最終的に2.0%まで引き上げるには、ここから約3年間、年2回のペースで利上げを積み重ねる必要がある。
円相場については、日銀の利上げ観測と米連邦準備制度(FRB)の据え置き長期化が金利差縮小の方向に働き、中長期的な円高要因となる。ただし、原油高による輸入コスト増大や中東地政学リスクはドル需要を高める圧力として反作用するため、当面は荒れた値動きが続きやすいとみられている。
国際政治・地政学
ホルムズ海峡、5月4日以降実質閉鎖 — 世界の原油輸送2割が遮断
ホルムズ海峡は5月4日以降、タンカーの通航が記録されておらず、事実上の閉鎖状態が続いている。米国とイスラエルが2月28日にイランへの軍事作戦を開始し、4月8日に停戦合意が成立したものの、5月8日には米軍がホルムズ海峡内でイランのタンカー2隻に砲撃を行い、停戦が崩壊寸前にまで追い込まれた。
ホルムズ海峡の2本の一方通行航路は1日あたり約2,000万バレルの原油と大量のLNGを輸送し、世界の海上石油貿易の約20%を占める。閉鎖が続く中、WTI原油先物は5月8日時点で1バレル95ドル近辺で推移し、世界銀行は2026年の年間ブレント原油平均価格を86ドル(2025年の69ドルから大幅上昇)と予測している。
日本政府は経済産業省主導で石油の代替調達を進め、5月時点で紛争前の6割水準の調達めどを付けたとしている。しかし帝国データバンクの調査では、原油価格高騰が経営に「マイナス影響がある」と答えた企業が96.6%に上り、6カ月程度長引いた場合は43.8%の企業が主力事業の大幅縮小を余儀なくされる可能性があるとしている。トランプ政権は「プロジェクト・フリーダム」と呼ばれる海峡再開に向けた交渉を継続しており、その進展が世界経済の最重要変数となっている。
Wikipediawikipedia.org CNBCcnbc.com 帝国データバンクtdb.co.jp
トランプ・習近平首脳会談、5月14〜15日に北京で開催 — 貿易よりイラン問題が主要議題に
米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席は5月14〜15日に北京で首脳会談を行う。トランプ大統領の中国訪問は約10年ぶりとなる。昨年10月の韓国・釜山での首脳会談では米国の対中関税を57%から47%に引き下げる一時的な貿易休戦が合意されており、今回はその後継となる枠組みの交渉が中心となる。
しかし複数の分析機関は、今回の首脳会談ではイラン問題が議題の中心を占め、関税交渉やレアアース問題での具体的進展は限定的にとどまると予測している。CNBCの報道によれば、米国側はイランとの和平合意の達成に向けた中国の協力を優先しており、対中貿易問題は後回しになる可能性が高い。世界経済フォーラムの分析では、両首脳は「安定の維持」を基本路線とし、実質的な関税引き下げよりも「貿易委員会」設置など管理機制の構築を重視する見通しだ。
中国経済は内需低迷が続き、3月の小売売上高の伸びは前年同月比1.7%にとどまった。一方、中国の対米輸出は前年同月比11%減となる一方で、非米市場向け輸出は21.8%増と急拡大しており、脱米サプライチェーンへの転換が加速している。釜山合意の一時的関税休戦は2026年11月に期限を迎えるため、今回の首脳会談がポスト釜山の枠組みを占う試金石となる。
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ウクライナ停戦、5月9〜11日に一時的合意 — しかしロシアの攻撃は継続
ウクライナのゼレンスキー大統領は5月9〜11日の3日間にわたる一時停戦とロシア側との1,000人ずつの捕虜交換を確認し、トランプ米大統領もこの合意を支持した。しかし停戦の実態は依然として不安定で、ウクライナ外相はロシアがドローンおよびミサイル攻撃を継続していると非難している。
交渉の背景には、ロシアが5月8〜9日の独自の「勝利の日」停戦を宣言したのに対し、ウクライナが5月5日から独自の停戦を宣言するという「競合する停戦宣言」の構造がある。根本的な隔たりは解消されておらず、ロシアはドネツク州の残存地域の割譲をウクライナに求め、ウクライナは安全保障の明確な保証なしに合意できないと主張している。
ウクライナ和平交渉は2カ月以上停滞しており、米国の外交的注力がイラン問題にシフトしたことで欧州への負担が増大している。ロシアは中東情勢による原油高を追い風に石油輸出収入がポスト侵略後最高水準(週平均24.2億ドル)に達しており、交渉での時間的余裕があるとの観測も出ている。EUは5月の外相理事会でウクライナ支援の継続と追加制裁を議論している。
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高市首相、ベトナム・オーストラリア歴訪を終える — インド太平洋連携を強化
高市首相は5月1日から5日にかけてベトナムとオーストラリアを歴訪し、ベトナムのフオン首相、オーストラリアのアルバニージー首相との首脳会談を相次いで行った。インド太平洋地域での経済安全保障の強化と軍事・外交面での連携深化が主要議題となった。
高市政権はレアアースなど重要鉱物の調達多様化を政策の柱の一つに位置付けており、中国依存からの脱却を図るサプライチェーン再編の文脈でベトナム・オーストラリアとの関係強化が進んでいる。5月11日からのベッセント財務長官訪日との連続性の中で、日本は同盟国・友好国との経済安保の枠組みを整備しつつ、対米関係での交渉カードを積み上げる戦略をとっている。
マーケット・金融
日経平均、史上最高値圏で推移 — 5月9日夜間先物は6万3,760円
日経平均株価は5月7日に史上最高値を大幅更新し、その後も高値圏を維持している。5月9日の大阪証券取引所の夜間先物取引では前日比920円高の6万3,760円、シカゴ日本株先物も1,435円高の6万3,665円で推移した。米国株ADRも買い優勢で、ホンダ・オリックスなどが上昇した。
上昇の主な要因は、米・イランの戦闘収束への期待と米連邦裁判所による対中関税無効判断を受けた世界的なリスクオン心理の高まりだ。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)の上昇に追随し、半導体関連株・電子部品株への買いが日経平均を押し上げた。
今後の焦点は、5月11日から始まるベッセント財務長官の訪日と5月14〜15日の米中首脳会談の結果だ。特に日米為替協調に関する何らかの合意がみられた場合、円高が進み輸出株には逆風となる可能性がある。一方、米中首脳会談で貿易摩擦の緩和が確認されれば、グローバルリスクの後退として株高・円安の組み合わせが続く展開も想定される。
米連邦準備制度、政策金利を3.5〜3.75%に据え置き — 過去30年で最多の異論票
米連邦公開市場委員会(FOMC)は4月29日の会合で政策金利目標レンジを3.5〜3.75%に据え置いた。これで3回連続の据え置きとなるが、注目されたのは8対4という異例の票決構造だ。ミラン理事が25bpsの引き下げを主張し、3名の理事は今後の利下げ再開を示唆する声明文の文言に反対した。1992年10月以来最大の異論票数となり、FOMCの見解の分散が鮮明となった。
FOMCの政策判断を複雑にしているのは、中東情勢に起因するエネルギー価格上昇によるインフレ高止まりと、10%包括関税の違法化などトランプ政権の関税政策の不確実性だ。FOMC声明では「インフレは一部にエネルギー価格上昇を反映して高水準にある」と明記し、中東情勢が経済の不確実性を著しく高めていると指摘した。
CMEフェドウォッチによると、市場は年内の政策金利据え置きを高確率で織り込んでおり、FRBが利下げに転じるのは2027年以降になるとの見方が支配的だ。次週に米消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、エネルギー価格の影響度合いに市場の注目が集まる。
Federal Reservefederalreserve.gov
米国際貿易裁判所、トランプの10%包括関税を違法と判断 — 1,660億ドル還付問題
米国際貿易裁判所は5月7日、2対1の評決でトランプ大統領が今年2月に発動した10%包括関税を違法と判断した。裁判所は、大統領令が1974年通商法第122条が要求する「国際収支赤字」の認定を欠くとして、関税の法的根拠が失われると判示した。この判決は、1月の連邦最高裁判決で高率の包括関税が大統領権限を超えると判断された後に、トランプ政権が別の法律を根拠に再発動した関税に対する2度目の大きな司法的打撃だ。
ただし実際の影響は限定的で、今回の判決は訴訟当事者である中小企業2社とワシントン州に対してのみ関税をブロックするもので、その他の輸入業者への適用は控訴の結論が出るまで維持される。トランプ政権は翌8日に連邦巡回控訴裁判所に控訴しており、最終的には連邦最高裁への上告も視野に入れている。
問題の核心は、推定1,660億ドルに及ぶ「不当に徴収された」関税の還付処理にある。米政府はすでに還付申請ポータルを開設したが、「第1フェーズ」ではすべての輸入業者が対象となるわけではなく、実際の小切手発送は「今夏以降」の見通しとされる。この法的混乱は、輸入に依存する日本企業を含むグローバルサプライチェーンにとっての長期的な不確実性として残っている。
Al Jazeeraaljazeera.com NPRnpr.org US Newsusnews.com
原油価格、WTI95ドル近辺で高止まり — ロシアは原油輸出収入を侵略後最高水準に
WTI原油先物は5月8日時点で1バレル95ドル近辺で推移しており、ホルムズ海峡閉鎖の長期化懸念が価格の下支え要因となっている。世界銀行は2026年のブレント原油平均価格を86ドル(2025年の69ドルから24%上昇)と予測しており、エネルギー価格は4年ぶりの大幅上昇局面にある。
この状況で最も利益を得ているのはロシアで、原油輸出の船積み価値は2022年の侵略以来最高となる週平均24.2億ドルに達している。西側の制裁をかいくぐる形でインドや中東向けの輸出が急増しており、エネルギー収入がウクライナでの戦闘を継続する資金源となっている構図がある。
日本経済にとっては原油高が実質購買力を直接損なう深刻なリスクだ。野村証券の分析では円安・原油高の「二重苦」が続く場合、2026年度の実質GDP成長率が0.5%程度押し下げられる可能性があるとされる。政府はエネルギー安定供給のための緊急対策を継続しており、代替調達先の多様化と石油備蓄の活用を組み合わせた対応が続いている。
世界銀行worldbank.org Russia Mattersrussiamatters.org
日本財務省、3月の国税収入が前年比3.3%増 — 法人税が2割増、脱デフレを反映
財務省が公表した2026年3月の国の税収は前年同月比3.3%増となり、なかでも法人税収が約2割増加した。企業業績の拡大と名目賃金・名目GDPの上昇が税収増の背景にあり、「デフレからの完全脱却」が税収面でも確認されつつある。
法人税収の増加は、高市政権が打ち出した積極財政路線の財源論にとって追い風となる。政府は骨太方針2026の議論の中で、企業業績改善を財政再建の手段と位置付けているが、原油高・円安による企業コスト増や米中貿易摩擦の影響が2026年度下半期の法人税収を押し下げるリスクには引き続き警戒が必要だ。
企業・産業
マイクロン、広島工場で次世代メモリー製造棟の建設に着工 — AI需要を取り込む1.5兆円投資
米半導体大手マイクロン・テクノロジーは5月に広島工場で新たな製造棟の建設に着工した。投資総額は1兆5,000億円で、経済産業省が最大5,000億円を補助する。AI向けの高帯域幅メモリー(HBM)など次世代メモリーの生産を2028年ごろに開始する計画で、完成後は日本が主要な対米メモリー供給拠点となる見通しだ。
この投資は、日本政府が半導体産業強化の旗艦プロジェクトと位置付けるものの一つで、TSMCの熊本工場に続く大型の外資誘致案件となる。経産省は2026年度以降、毎年1兆円規模を当初予算で確保して半導体支援を安定的・継続的に行う体制に転換しており、補正予算頼みから脱却した政策的シグナルとして産業界に受け止められている。
中国のAIコンピューティング需要急増を背景に、半導体輸出管理の強化が進む中で日米同盟のサプライチェーン強靭化の観点からもマイクロンの広島投資は戦略的意味を持つ。日本の半導体市場規模は2026年に501億ドルへ拡大(前年比11.9%増)すると予測されており、製造装置株を含む日本の半導体関連銘柄全体の業績拡大期待も高まっている。
東京エレクトロンtel.co.jp stockmarkaconnect.stockmark.co.jp
ラピダス、累計支援額1.8兆円 — 2nm最先端半導体の試作開発が正念場
国内製の2ナノメートル世代の最先端半導体を開発するラピダスに対し、2025年度に最大8,025億円の追加支援が決定され、政府の累計支援額は約1兆8,000億円に達した。2026年度以降は本予算で年1兆円規模を確保する枠組みが整い、同社は北海道千歳工場での試作ラインを本格稼働させる段階に入っている。
ラピダスの成否は、日本の半導体産業が先端品の自国製造能力を持てるかどうかの試金石だ。TSMCやサムスン電子、インテルに対し技術的・規模的に大きく劣後した状況からのキャッチアップとなるため、量産移行時の歩留まり改善や顧客確保が引き続き課題となる。一方で、米政府が中国向けの先端半導体輸出規制を強化する中で、日本国内の製造拠点としてのラピダスの地政学的価値は高まっており、日米間の「フレンドショアリング」推進の象徴的存在として位置付けられている。
中国、AI向け半導体輸入が過去最高水準 — 四半期で1,350億ドル規模に
中国の2026年第1四半期の半導体輸入額は過去最高の1,350億ドルに達した。これは主にAI向けのコンピューティング需要の爆発的拡大を反映しており、中国国内でのデータセンター建設ラッシュが輸入急増の主因とされる。米国による先端半導体輸出規制が強化される中でも、抜け穴を通じた調達や旧世代チップの大量積み増しが行われていることを示している可能性がある。
この動向は、対中半導体輸出管理の実効性に対する米議会内での懐疑論を強める材料となりうる。同時に、中国の旺盛な半導体需要は韓国・台湾・日本の製造装置メーカーや素材企業にとっても潜在的な市場機会を意味しており、輸出管理の網が広がるにつれて対中ビジネスの戦略的判断が難しくなっている。
US-China Economic and Security Review Commissionuscc.gov
トランプ関税「1年間の実績」— Moody’s試算で1世帯あたり700ドルの負担増
「解放の日」から1年を経て、トランプ関税が米国経済に与えたダメージの検証が本格化している。Moody’sチーフエコノミストのマーク・ザンディ氏は「データは確定的だ。関税は経済に重大な打撃を与えた」と述べ、2026年のトランプ関税は米国の1世帯あたり平均700ドルの税負担増に相当すると試算した。
連邦最高裁が1月に高率の包括関税を違法と判断し、2月の新たな関税も5月7日に国際貿易裁判所に違法とされるなど、司法による制約が積み重なっている。しかし政権は控訴を繰り返すことで事実上関税を維持する戦術をとっており、企業にとっての不確実性は解消されていない。
日本企業への影響は自動車・鉄鋼・半導体の3分野で特に大きく、日米貿易交渉での合意が得られなければ関税問題が長期化するリスクがある。ベッセント財務長官の訪日(5月11〜13日)での交渉結果が、日本の輸出産業にとっての当面の最重要イベントとなっている。
日本の消費税食料品減税、2027年度からの2年間実施へ — 年5兆円の家計負担軽減
2月の衆院選で高市政権が圧勝した結果を受け、食料品に係る消費税率の一時的な引き下げが2027年度から2年間実施される見通しとなった。この措置が実施されれば、家計の年間税負担は約5兆円軽減される計算で、実質賃金の回復が課題となっている家計にとって実質的な購買力の底上げ効果が期待される。
ただし恒久的な税率引き下げではなく2年間の「一時措置」であるため、財政中立性の観点からは期限後の措置が問われることになる。財務省は財政健全化目標への影響を懸念しており、骨太方針2026の議論の中でどのように位置付けられるかが6月の閣議決定に向けた最大の焦点の一つとなっている。
日本、南米3億人市場のEPA交渉を2026年夏に始動へ
日本政府は南米主要国と経済連携協定(EPA)の交渉開始に向けた本格的な協議を2026年夏に行う方針を固めた。米国の関税強化による輸出市場の喪失リスクが高まる中、南米の約3億人規模の新興市場へのアクセスを確保する戦略的意図がある。
南米向けEPAの実現は、資源・農産物の安定調達と日本製品・サービスの輸出拡大の両面でメリットが期待される。特に中東情勢の悪化によるエネルギー調達リスクが高まる中で、南米のエネルギー資源(ブラジルの石油・バイオエタノール、アルゼンチンのリチウムなど)へのアクセス確保は経済安全保障の観点からも重要性が増している。ベッセント訪日後の日米交渉の行方を見極めながら、交渉開始のタイミングを慎重に見計らうものとみられる。