映像制作

FMX30周年とマンダロリアン——ストップモーションが復権するVFX最前線

欧州最大VFX・アニメカンファレンスFMXが5月5日から30周年記念大会を開幕。スター・ウォーズ最新作はILMとPhil Tippettのストップモーションを融合し、AIと伝統技法の共存という産業のテーマを体現している。

1. FMX 2026、30周年記念大会が5月5日開幕——「The Road Ahead」をテーマにAI・USD・アニメを論じる

欧州最大のアニメーション・VFX・デジタルメディアカンファレンス「FMX」が2026年5月5日〜8日、ドイツのシュトゥットガルト・Haus der Wirtschaftで30周年記念大会を開催する。テーマは「The Road Ahead(前進する道)」で、AI主導のワークフロー変革・新たな協働モデル・30年分のデジタルアートの集大成を探求する。On Siteは5月5〜7日、Online/On Campusが8日、On Demandは5月9日〜6月9日まで提供される。

今年の特徴はAIセッションに加えてレンズ(カメラ光学)のトークが大幅に増加し、実写とCGの境界が融けていく現場の関心を反映している。USDとUnreal Engineを軸にしたパイプライン統合の最前線も大きく取り上げられる予定で、スタジオ間のアセット共有と共同制作の効率化が主要テーマだ。アニメーションセッションではキャラクターパフォーマンスに焦点が当たり、Sony Pictures ImageworksのAdam SarophimによるKPop Demon HuntersとGOATの事例発表や、Jacob FreyによるZoomania 2のアニメーション解説が予定されている。

FMXはFilmakademie Baden-Württembergが主催し、Animation Production Days(APDマーケット)と国際アニメーション映画祭ITFS Stuttgartと同時開催される。VES(視覚効果学会)会員向けに20%割引チケットが提供されており、フレームストア、ILMなど世界の主要VFXスタジオが参加・登壇予定だ。30年の節目に合わせて新たなFMXリーダーシップ(ディレクター交代)も発表され、次の10年に向けた組織刷新が行われている。

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2. スター・ウォーズ「マンダロリアンとグローグー」:ILMとPhil Tippettがストップモーションを復活させる理由

5月22日に米国で劇場公開される『Star Wars: The Mandalorian and Grogu』(監督:Jon Favreau)は、AIとデジタルVFXが全盛の2026年において、意図的にストップモーション・ミニチュア・実物セットを大規模に活用した異色の制作を選択した。フィル・ティペットがドロイドクリーチャーのストップモーションシーケンス全体を担当し、ジョン・グッドソンがミニチュアモデル制作を手がけた。ILMのビジュアルエフェクトスーパーバイザー、ジョン・ノールも参加する豪華な体制だ。

Jon Favreauがこの選択をした理由として「スクリーン上の質感と重量感」が挙げられている。Volumステージはインタラクティブライトとリフレクションの補完に限定し、ジャングル・タンク・縦型セットなどの主要なシーンは実際のロケーションと実物セットで撮影された。これはDisney+ドラマ版『マンダロリアン』がVolume技術を前面に出した手法とは大きく異なり、劇場映画としての視覚的密度へのこだわりを示している。

最終トレーラーでは完全ストップモーションのドロイドシーンが確認でき、映画ファンからの注目を集めている。AIが中間フレーム補完やデノイジングなどのポストプロセスで活用される一方、創造的な表現における「手作業の意図的な選択」が改めて価値を持つ時代に入っていることをこの制作は象徴している。VFX業界において「AIで何でもできる」からこそ、アーティストの手仕事の痕跡に新たな意味が生まれている。

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3. VFX産業2026年のトレンド:AIは「置換」でなく「加速ツール」として定着

2026年のVFX産業全体の動向として、AIは映像制作現場で「アーティストを置き換えるもの」ではなく「ルーティン作業を高速化し、創造的問題解決に集中できる環境を作るツール」として受け入れられるフェーズに入った。クラウドレンダリング・バージョン管理・共有アセットプラットフォームの発展により、制作はよりウェブネイティブでコラボレーティブなものになっている。

AIが最も活用されているのはロトスコーピング・クリーンアップ・VFX合成の中間工程・ノイズ除去・エラー検出などのルーティン作業だ。リアルタイムレンダリング(Unreal Engine等)と仮想制作(Virtual Production)も引き続き普及しており、予算が厳しいプロジェクトでの工程短縮に貢献している。経済的な逆風(予算縮小)が業界全体にかかっている中でも、これらの技術が制作コスト削減の実効的な手段として採用されている。

一方でCadence Design SystemsとNVIDIAが発表した拡張パートナーシップも注目に値する。CadenceのマルチフィジクスシミュレーションエンジンとNVIDIAのIsaacロボティクスライブラリを統合し、「シム・トゥ・リアル(シミュレーションから現実への移転)」ギャップを解消するという取り組みだ。これはロボット工学だけでなく、物理シミュレーションを核とするVFXエフェクト(流体・煙・破壊)の品質向上にも波及する可能性がある。

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4. 進撃の巨人・諫山創がマンダロリアンのキービジュアルを描き下ろし——日米コンテンツ融合が加速

4月28日、Crunchyrollが『進撃の巨人』原作者の諫山創がスター・ウォーズ『マンダロリアンとグローグー』のインスパイアドビジュアルを描き下ろしたと発表した。ダークで緻密な諫山の絵柄がグローグーを取り込んだ独特のビジュアルは瞬く間にSNSで話題になり、スター・ウォーズとアニメファンの双方から反響を集めた。このコラボレーションはCrunchyrollのAni-May 2026キャンペーンとも連動しており、日米エンタメ産業の接近を象徴する出来事だ。

このビジュアルはLucasfilmとCrunchyrollの新たなコラボレーション関係を示すものでもあり、スター・ウォーズ知的財産のアニメスタイルへの拡張という長期戦略の一環ともとれる。『スター・ウォーズ:ビジョンズ』シリーズで始まった日本のアニメスタジオとの協業が、今度は著名な漫画家によるビジュアル展開という形でさらに発展している。

VFX産業の観点からは、こうしたコラボレーションがスター・ウォーズという大型IPへの関心をアニメファン層に拡張し、最終的に劇場VFX作品の観客層を広げる効果が期待されている。日本のアニメ産業と西洋のVFX産業の双方がグローバルな視聴者を取り合いながら、互いのコンテンツ資産を活用する「クロスオーバー経済圏」が形成されつつある。

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