映像制作

NetflixがAI企業を買収してVFXを自動化——世界の映像制作者が雇用消滅を恐れる

NetflixがBen Affleck設立のAI企業InterPositiveを買収し、カラーグレーディングや照明修正を自動化。インドや韓国のVFXアーティストが直接の影響を受ける一方、Dublin新設スタジオEnbarrの立ち上げなど雇用の二極化も進む

1. NetflixがAI企業InterPositiveを買収——カラーグレーディングの自動化でグローバルVFX雇用に打撃

Netflixが俳優Ben Affleckが設立したAI企業「InterPositive」を2026年3月に買収したことが報じられ、映像制作業界に衝撃が走った。InterPositiveの技術は映像のカラーグレーディング・照明のリライティング・連続性エラーの修正といった後処理作業を自動化するもので、従来はインド・韓国・フィリピン・ラテンアメリカのアーティストがフレーム単位で手作業していた工程を大幅に効率化する。Netflixは買収と同時に、インド南部のテクノロジーハブ・ハイデラバードに「Eyeline Studios」と名付けた新施設を3月12日にオープンし、「ジェネラティブ・バーチャルエフェクト」と呼ばれる生成AI型VFX処理の専用拠点として稼働させている。Rest of World誌の調査報道によれば、アジアや中南米で長年ポストプロダクションの「縁の下の力持ち」として働いてきた数万人規模のVFXアーティストが直接の影響を受けるとみられ、「技術革新の恩恵が先進国の企業に集中し、コスト圧縮のしわ寄せがグローバルサウスの労働者に及ぶ」という批判の声が上がっている。SAG-AFTRAなどの組合はアクター・ライター・監督の権利保護には取り組んでいるが、ポストプロダクション部門の技術者・アーティストへの保護が手薄な現状も改めて浮き彫りになった。

Rest of Worldrestofworld.org


2. ダブリンに新VFXスタジオ「Enbarr」誕生——Dream Machine FX傘下で全領域VFXに挑む

VFXアーティストのEd Bruce氏とNicholas Murphy氏が共同で新スタジオ「Enbarr」をアイルランド・ダブリンに設立し、2026年4月にDeadlineが報じた。EnbarrはDream Machine FX Groupという複数のVFXスタジオから成るコレクティブの傘下に入り、CGIエンビロメント・FXシステム・エイジング&デエイジングといったビジュアルエフェクトの「フルスペクトラム」をカバーするスタジオとして位置づけられている。アイルランドはEUの映像制作税制優遇措置と充実した映画学校・人材供給を背景に、欧州VFX産業の新たな拠点として注目を集めており、Enbarrの設立はその流れを加速する動きとして受け止められている。ハリウッドのメジャースタジオが大規模なVFXワークをAI自動化に切り替える中で、高度なCGや視覚的な複雑さを要求するプロジェクトでは依然として専門スタジオの人材が不可欠とされており、EnbarrのようなニッチなエクセレンスとAIとの協調を目指す専門スタジオには成長余地があるとも見られている。AI大量自動化が進む時代に、VFXの職人技を守るコミュニティがどのように生き残りを図るかの試金石となりそうだ。

Deadlinedeadline.com


3. Runway Gen-4・Google Veo・Sora 2がキャラクター一貫性を実現——AI映像の最大課題がついに解決

2026年春、AIビデオ生成の最大の技術的障壁だった「シーンをまたいだキャラクターの視覚的一貫性」が主要ツールで実用レベルに到達したとActionVFX誌が報告している。Runway Gen-4、Google Veo、OpenAI Sora 2の各ツールが同一キャラクターの顔・服装・体型をシーンを超えて維持できる機能を実装し、従来の最大の欠点を克服した。これにより「AIだけで制作したショートフィルム」「コンセプトビジュアライゼーションの高速プロトタイピング」「低予算インディーズの特殊効果」といった応用が現実的になった。制作会社はシナリオ段階でのプリビズ(Previsualization)をAIで迅速に作成し、人間のVFXアーティストが高付加価値の最終クオリティ仕上げに集中するというワークフローへの移行が進んでいる。一方でスタジオ幹部はAIの活用でVFX・3Dアセット作成において80〜90%の効率向上が見込まれるという見通しも示しており、業界全体のコスト構造が根本から変わる可能性を示唆している。AIツールがキャラクター制作の「量産」を可能にする中、クリエイターとAIの役割分担の再定義が業界共通の課題として浮上している。

ActionVFXactionvfx.com


4. 「The Night Agent」シーズン3のCG飛行機シーン&水中格闘——Outpost VFXのブレイクダウン公開

Outpost VFXが手がけたNetflixドラマ「The Night Agent」シーズン3のVFXブレイクダウンが公開され、大規模なCG飛行機シーケンスと緊張感ある水中格闘シーンの制作工程が明らかになった。CGIによる機体モデリング・飛行経路シミュレーション・環境光との整合性確保という3つの課題を同時にクリアした飛行機シーケンスは、実際の撮影では費用や安全上の制約から実現不可能なシチュエーションをフォトリアルに描き出している。水中格闘シーンでは波の揺らぎ・光の屈折・衣服の動きを物理シミュレーションで再現し、俳優の演技との合成で観客が違和感を覚えないクオリティを実現した。このブレイクダウンはVFX業界での透明性向上の流れの一環で、制作会社・アーティスト志望者・映画学校の教材として広く活用される見込みだ。リアルタイムレンダリングとゲームエンジン(Unreal Engine)の活用が進む中でも、フォトリアルな映画VFXの最高峰では依然として従来型のオフラインレンダリングとコンポジットが主力であり続けており、技術の多様性がこの業界の豊かさを示している。

Befores & Aftersbeforesandafters.com


5. ハリウッドのAI普及率調査——Disneyは1億ドルでOpenAI Soraを採用、SAG交渉は今年再燃へ

2025年12月にDisneyが10億ドルを投資してOpenAIのSoraビデオプラットフォームにマーベル・ピクサー・スターウォーズのキャラクター200体以上のライセンスを付与したことが、2026年のハリウッドAI化の起点となっている。Soraを使ったコンセプトアートとアセット生成はすでに複数のDisneyプロジェクトで実運用に入っており、キャラクターデザインの初期ドラフト作成・背景アートのバリエーション生成などでの活用が進んでいる。Hollywood Reporter誌の分析によれば、AIはハリウッドにとって「両刃の剣」であり、コスト削減・制作速度向上という恩恵の裏で脚本家・俳優・VFXアーティストの権利侵害リスクが高まり続けている。SAG-AFTRAとの新たな労使交渉が2026年2月9日に始まり、AI生成コンテンツにおけるパフォーマーの権利・報酬・同意の問題が中心議題となっている。また連邦当局は俳優のAIライクネスを保護する州法への挑戦を始めており、国と州の権限をめぐる法的争いが業界全体を揺さぶっている。技術革新の速度に法律・労働協約・倫理規範が追いつけるかどうかが、今後数年のハリウッドの最重要課題だ。

The Hollywood Reporterhollywoodreporter.com