映像制作

Rodeo FXパリ統合・Radical買収・Chaos Phoenix廃止—VFX業界が再編加速

Rodeo FXがMikros Animationと融合した4万平方フィートのパリスタジオを開設し、AutodeskがAIモーションキャプチャ企業Radicalを買収。Chaos Phoenixの終了も重なりVFX業界の構造変化が一気に加速している。

1. Rodeo FXがパリに統合スタジオを開設—Mikros Animationとの融合で欧州VFX拠点を強化

カナダ・モントリオールを本拠とするVFXスタジオのRodeo FXが、フランス・パリのRue Dieu(サン・マルタン運河近く)に4万平方フィート超の新スタジオを正式開設した。この新拠点は、映画・エピソディック部門・広告部門・2025年に買収したMikros Animationを一つの屋根の下に統合するもので、フランスのすべての事業部門が初めて集結することになる。Mikros Animationは「PAW Patrol: The Mighty Movie」や「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ:ミュータント・マヤム」などの作品で知られるアニメスタジオで、今回の統合により映像制作のVFXとフルCGアニメーション部門が相互補完的なパイプラインを共有できる体制が整う。Rodeo FXはNetflixやPathéの新プロジェクトでの協業を進めており、欧州における制作需要の拡大に対応した戦略的投資と位置付けられている。フランス政府のコンテンツ制作支援税制を最大限に活用しつつ、一時流出していた映像人材を国内に呼び戻す取り組みとしても注目されている。「ロード・オブ・ザ・リング」「デューン」シリーズ等の大作を手掛けてきた同社がパリを第二の柱に育てる意志が改めて示された。

2. AutodeskがAIモーションキャプチャ企業Radicalのコア技術とIPを買収—サービスは7月6日閉鎖

Autodesk社がAIを活用したビデオベース・モーションキャプチャ技術を開発するスタートアップ「Radical」の中核技術と知的財産(IP)を買収したことが発表された。Radicalは専用のモーションキャプチャスーツや光学カメラを不要とし、通常のビデオカメラ映像だけで人物の骨格・ポーズ・動きのデータを高精度に抽出できるAIシステムを開発してきた。この技術はインディーゲーム開発者やVTuber、小規模な映像制作スタジオにとって、高額なOculus・Vicon等のシステムの代替手段として普及しつつあった。Autodesk傘下に入ることで、MayaやMotionBuilderとの深い統合が期待されるが、一方でRadical.appの独立サービスは2026年7月6日をもって終了することが発表されており、既存ユーザーは移行を迫られている。MayaへのAI機能統合という観点では、昨年追加されたMotionMakerに続く強化の流れと一致しており、Autodesk全体のAI戦略の加速を示している。

3. Cascadeur 2026.1リリース—AI駆動Root Motionシステム追加とUE5ライブリンク対応

Nekkiが開発するAI支援アニメーションツール「Cascadeur」の最新バージョン2026.1がリリースされた。今バージョンの目玉は新しい「Root Motionシステム」で、AIがキーポーズ間のアニメーションを自動生成する際に、キャラクターの重心移動・足の接地・慣性の物理的正確性を高い精度で再現できるようになった。歩行・走行・ジャンプといった移動アニメーションの品質が従来比で大幅に向上し、後手動補正が必要なカット数が減少するとレビューでは報告されている。またUnreal Engine 5とのライブリンク機能が強化され、Cascadeur上でアニメーションを調整しながらUE5上でリアルタイム確認できるワークフローが実現した。ゲーム開発・映像制作両方の現場での採用事例が増えており、専用ハードウェアを使わずにプロ品質のアニメーションを制作できるツールとして注目されている。Blenderアドオンとしてのエクスポートも引き続きサポートされており、幅広いパイプラインへの組み込みが容易だ。

4. Autodesk Flow StudioにWonder 3D搭載—テキスト・参照画像から即座に3Dキャラクターを生成

AutodeskはFlow Studioに生成AI機能「Wonder 3D」を統合したことを発表した。Wonder 3Dはテキストプロンプトまたは参照画像を入力するだけで、アセットパイプラインで扱える品質の3Dキャラクターやオブジェクトを自動生成できる。生成されたアセットはそのまま3ds Max・Maya・Blender・Unreal Engineなど主要DCC・ゲームエンジンへエクスポート可能で、後から自由に編集・リグ付けが行える点が既存の生成AIツールと差別化される。さらにAutodesk LookdevXとの統合を通じて「Generative Textures API」も公開されており、スタジオが社内で利用している既存の生成AIサービスをMaya内のマテリアル開発ワークフローに直接プラグインできる。プリプロダクション段階でのコンセプトモデル高速生成・背景小物の量産・プロトタイプへの活用が主な用途として想定されており、従来アーティストが数時間かけて行っていた作業を数分に短縮できるという。Autodesk Flow Studioはフリーミアム価格でアクセス可能になっており、中小スタジオやフリーランスへの普及も期待されている。

5. Chaos Phoenix、3ds MaxおよびMaya向け流体シミュレーションのサポートを正式終了

VFXソフトウェア大手のChaosは、流体シミュレーションプラグイン「Phoenix」の3ds MaxおよびMaya向けバージョンをエンドオブサポート(EOS)とすることを正式発表した。Phoenixは炎・煙・液体・泡などをリアルに表現するシミュレーションツールとして長年にわたり映像制作の現場で使われてきたが、今回の決定により今後のバグ修正・アップデート・サポート対応が終了する。ChaosはHoudini/SideFXとの連携を強めており、ハイエンドシミュレーション市場でのリソースをそちらに集中させる戦略転換とみられる。一方でBlenderアドオンとしてのStoumbleフォークや、HoudiniのFLIPソルバーへの移行を検討する制作会社も増えている。3ds Maxユーザーにとっては利用可能な流体シミュレーションオプションが限られてきており、今後のパイプライン移行コストが懸念される。AIを使った流体シミュレーション高速化(NeRF系・拡散モデル系アプローチ)の研究も並行して進んでおり、従来型シミュレーターの地位が中長期的に変わっていく可能性もある。